2020 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍周囲肺のテクスチャ解析を用いた肺癌の新しい予後予測法の確立
Project/Area Number |
20K16693
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山崎 元彦 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30772032)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肺癌 / EGFR遺伝子変異 / テクスチャ解析 / Radiomics / 腫瘍周囲肺 / 肺腺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】本研究の目的は、肺癌予後予測における腫瘍周囲肺テクスチャ解析の有用性を明らかにする事である。当該年度は肺癌の重要な予後因子であるEGFR遺伝子に着目し、腫瘍と腫瘍周囲肺のCTテクスチャ解析を組み合わせる事で、EGFR遺伝子変異の予測能が向上するかについて検証した。 【方法】対象は2015年から2020年までに新潟大学病院で手術された肺癌症例のうち、EGFR遺伝子検査を受け、かつ当院の術前HRCT画像がPACSにある447例(うち腺癌が323例、他の組織型が124例)。まず、腫瘍の代表的なCT断面を研究代表者が選択し、その1断面における腫瘍内のテクスチャ特徴量115個を、画像解析ソフトで抽出した。続いて、腫瘍周囲肺(腫瘍辺縁から5mmまでの範囲の肺と定義)のテクスチャ特徴量93個を抽出した。EGFR遺伝子変異の予測能は機械学習(random forest)で評価した。腫瘍のCTテクスチャ解析単独に比し、腫瘍周囲肺のCTテクスチャ解析を併せると、遺伝子変異の予測能が向上するかを評価した。 【結果】EGFR遺伝子変異は447例中150例で認められ、組織型はすべて腺癌であった。腫瘍のCTテクスチャ解析単独に比して、腫瘍周囲肺のCTテクスチャ解析を併せると、EGFR遺伝子変異の予測能は有意に向上した(ROC曲線下面積 = 0.777 vs. 0.800; P = 0.032)。症例を腺癌のみに絞って解析しても、腫瘍周囲肺のCTテクスチャ解析を併せた方が、予測能は高い傾向があった(ROC曲線下面積 = 0.686 vs. 0.709; P = 0.084)。 【結論】腫瘍と腫瘍周囲肺のCTテクスチャ解析を併せると、EGFR遺伝子変異の予測能が向上する。 【研究意義】CTで非侵襲的にEGFR遺伝子変異を予測出来る事で、その後の侵襲的な遺伝子検査を行うか否かの判断材料となり得る。遺伝子変異の予測に腫瘍周囲肺テクスチャ解析が有用であるという報告はまだ乏しく、本研究結果は国内外の学会や論文で報告する意義があるものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この一年間で447例と多数のCT画像の解析が出来ている。研究成果としては、EGFR遺伝子変異との対比で意義のある結果が見い出せている。実際の予後との対比は未完了ではあるが、予後データの収集は順調に進んでいる。以上より、『おおむね順調に進展している』と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は下記の通りである。 1)肺癌の術後予後予測における腫瘍周囲肺テクスチャ解析の有用性を明らかにする。具体的には、腫瘍と腫瘍周囲肺のCTテクスチャ解析を組み合わせる事で、術後予後の予測能が向上するかを統計学的に評価する。 2)予後予測に有用なテクスチャ特徴量が、どの様な病理像と対応しているかを検証する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額(412,833円)が生じた大きな理由として、新型コロナウイルスの影響で国内外の学会が中止またはオンライン開催となり、旅費が予定よりも大幅に減額となった事が挙げられる。 次年度は学会が現地開催される事を見込んだ旅費使用を計画しているが、次年度も大幅に旅費が減額となった場合は、その残額を投稿論文のオープンアクセス費用やカラー印刷費用、研究協力者用のPC購入などに充てる事を考えている。
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