2021 Fiscal Year Research-status Report
エクソソームを利用した過酸化チタンナノ粒子による新規放射線増感療法の基礎的検討
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20K16700
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岩下 和真 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (80850065)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | チタンナノ粒子 / APS |
Outline of Annual Research Achievements |
①エクソソームの単離 Miapaca-2細胞をT75FK内培地で培養し、Exosome free培地に交換して放射線照射を行った。48時間後に3200rpmで10分間遠心分離し細胞上清のみを回収した。その後超遠心機を用いて30000RPMで1時間半遠心分離を2回行い、超遠心後の上清を捨てて底に残ったPBSを回収した。タンパク定量を行いエクソソームの単離を確認した。 ②エクソソームに過酸化チタンナノ粒子(TiOxNPs)を包含 エクソソーム内にTiOxNPsを包含することが困難であるため、TiOxNPsを体内に運搬する別の方法としてAPS(Antibody Polyphenol System)に着目した。APSとはタンニン酸とタンニン酸をタンパク質もしくは抗体が架橋し三次元的な構造を作るものである。放射線抵抗性のがん幹細胞の表面抗原を認識した選択的結合が他施設ですでに報告されている。特定の抗体やタンパク質を組み込んだAPSでナノ粒子をコーティングして、ナノ粒子に腫瘍への輸送機能や腫瘍滞留性向上機能を付加することができないか検討した。APS修飾したTiOx精製についてまず検討を行った。ポリアクリル酸-TiOxをミリQで定量に調整し、タンニン酸溶液と蛍光標識した抗CD44抗体を加えて反応させ、セルロース透析を行って精製した。MDA-MB-231細胞を用いて、APS修飾を行ったポリアクリル酸-TiOxと反応させた。細胞が浮遊状態か接着状態のどちらの条件が適切か共焦点レーザー顕微鏡で評価したところ、細胞は浮遊状態の方が接着状態よりも多くのTiOxを取り込んでいることが認められた。今後はAPS修飾したTiOxを用いて細胞実験を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの進捗状況は当初の予定よりも遅れている。エクソソームを単離することには成功しているが、エクソソームに過酸化チタンナノ粒子(TiOxNPs)を包含する方法の確立に難航していることが原因である。当初はエレクトロポレーションによる直接透過によってエクソソーム内部にTiOxNPsを送達する方法を立案したが、エクソソームが細胞死を生じ効率的には送達できなかった。そのためTiOxNPsを細胞内に運搬する方法として、エクソソームではなくAPSを用いてナノ粒子自体をコーティングし、細胞内部に効率良く運搬する方法の確立を目指している。現在はTiOxNPsにAPS修飾を行うことには成功しており、細胞内に取り込まれた際の放射線増感作用などについて検討を進めている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
TiOxNPsを体内に運搬するためにエクソソームを用いる方法を検討していたが、エクソソーム内部にTiOxを包含する手段の確立に難渋したため、別の手段としてAPS修飾を行ったTiOxを用いた運搬方法の確立に向けて更なる基礎的検討を進めていく。抗CD44抗体を付加したAPS修飾を行うことで、TiOxは効率よく細胞内に取り込まれる可能性がある。TiOxを細胞内に送達する方法が確立できれば、次に放射線増感作用の評価を行う。まず放射線併用時の活性酸素生産能について評価を行った後、MDA-MB-231細胞を用いてAPS修飾したTiOxの放射線増感効果、毒性の評価について実験を進めていく予定である。その後担癌マウスにAPS修飾したTiOxの投与を行い、腫瘍集中性の評価および放射線照射時の放射線増感効果について検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
物品については必要であったものを購入したが、本年度もCOVID-19流行の継続により国内、海外含め学会発表がほとんど中止となりオンライン開催となったため、旅費を計上しなかった。その他、COVID-19の影響により研究活動も一時制限されていた時期があった。COVID-19流行は徐々に落ち着きつつあるも引き続きCOVID-19の影響により学会等についてはオンライン開催が予想される。旅費で計上している分については、追加の研究資材に充当する予定である。
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