2023 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外蛍光性ホウ素中性子捕捉療法薬剤のアルブミン多量体を用いる高効率腫瘍送達法
Project/Area Number |
20K16773
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Research Institution | Showa Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
尾江 悟 昭和薬科大学, 薬学部, 助教 (90756107)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ホウ素中性子捕捉療法 / 光イメージング / アルブミン / ホウ素含有蛍光色素 / EPR効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、BNCT適用可否の診断とBNCTによる治療の両方を可能とするBNCT用薬剤としてホウ素含有近赤外蛍光色素の開発を行ってきたが、その実用化には、より効率的な腫瘍送達が必要であると考えられた。そこで、本研究では、腫瘍組織へのホウ素の高効率送達を目指して、① アルブミン多量体と、② 新たなホウ素含有近赤外蛍光色素を創製し、③ ①と②を融合したBNCTのためのホウ素高効率腫瘍送達を可能とする薬剤の開発を進めた。 ① アルブミン多量体の創製では、化学的な手法を用いてアルブミンを2量体~4量体の多量体とし、輸送担体の腫瘍間質への集積性向上を目指した。その結果、単量体、2量体、4量体の順に血中滞留性は増大し、また、脾臓と肝臓での集積は高くなった。腫瘍における集積は単量体と2量体で同等であったが、4量体で低下する傾向にあった。また、2量体について標的指向性の向上を目的として、がんで過剰発現するインテグリンに対して高い結合親和性を示すRGDペプチドを導入し、その体内動態評価を行った。その結果、腫瘍集積率は低下するものの、腫瘍/血液比が向上した。 ② 新たなホウ素含有近赤外蛍光色素を創製では、アルブミンに対して適度に結合して腫瘍組織に運搬され、腫瘍組織でアルブミンから解離して腫瘍細胞内へと移行しやすい化合物の開発を目指した。3つの候補化合物を設計・合成し、それらの体内動態評価を行った。その結果、血中滞留性が高い化合物ほど、腫瘍組織に高く集積することを認めた。血中タンパク質への結合が化合物の腫瘍組織における集積に影響する一因であることが示唆された。一方で、設計した化合物の水溶液に対する溶解性は低かった。 今後、水溶性を向上したホウ素含有近赤外蛍光色素の設計が実用化に向けて必要であるが、本研究において、腫瘍組織への送達性を向上したアルブミン多量体を見出すことができた。
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