2020 Fiscal Year Research-status Report
ポリマーゲル線量計と生物学的評価手法の組み合わせによる線量評価法の探索
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20K16810
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
今道 祥二 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (40761599)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ポリマーゲル線量計 / 線量計 / 深部線量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、従来行われている放射線治療について立体的分布の線量評価を細胞実験で評価することを目的としている。既存のポリマーゲル線量計を改良し、細胞での評価を行える線量計開発を計画した。現在粒子線治療等で重要となっている深部線量評価を行うことができ、また生物学的手法による評価を行えることを目標としている。 2020年度は新規ポリマーゲル線量計の開発と立体分布した細胞への影響評価に取り組んだ。まず、細胞培養を可能とする組成によるポリマーゲル線量計の開発において、既存のポリマーゲル線量計成分中での培養及び培地等を利用したポリマーゲルの作製を試みた。細胞培養培地等を用いた新規ポリマーゲル線量計を試作し、複数の候補を得た。その候補にたいしてガンマ線照射またはX線照射を行ったところ、線量依存的な呈色反応が生じることが確認できた。一方で、色の退色の時間が既存のポリマーゲルと違う傾向にあることが考えられたため、照射後の時間及び温度による影響について検証を行っている。また、候補のポリマーゲル線量計に細胞を混ぜ、細胞への影響評価と長期間の培養が可能か検証を行っている。細胞培養を可能とする最適なゲル強度や培養時間、形状についても検証を行っている。細胞への影響評価はDNA損傷応答関連因子であるγH2AX、53BP1などを指標とした免疫蛍光染色法を用いて求めることとし、通常の細胞培養からそれらの影響評価を試みて基礎データを取得しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新規ポリマーゲル線量計の開発においては細胞培養を可能とする組成によるポリマーゲル線量計候補を得たが、この新規ポリマーゲル線量計成分の検証に時間を要してしまい遅れが生じている。得られた候補について放射線照射後の呈色反応の検証し、また時間的変化や温度の影響にも検証も行っている。また、得られた候補のポリマーゲル線量計成分に細胞を混ぜて培養を行い、その影響も検証を行いつつあり、小型バイアルに分注した状態でのポリマーゲル中への細胞の分布の確認を行っている。DNA損傷応答因子を指標とした免疫蛍光浅色による経時的観察は、通常の培地等での培養での試行を行い、基礎データを取得した。
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Strategy for Future Research Activity |
新規ポリマーゲル線量計での細胞の培養可能性を確認する。細胞を培養できることが確認できた場合、その成分中での培養による影響を評価する。次に、小型バイアルに分注した細胞懸濁液をポリマーゲル中に複数設置する方法を検証する。小型バイアルを設置した状態での応答特性・感受性について求め、どの程度の影響があるかについて検証する。 ポリマーゲル線量計に細胞を混ぜた状態でのX線照射を行い、複数の深さ位置に存在する細胞をコロニー形成法、MTT法、免疫蛍光染色により細胞生存率また損傷の程度を明らかとする。また、呈色反応による線量評価と、照射した線量を比較してその応答性の確認も行う。また、陽子線や中性子線による照射も行い、複数の深部位置における細胞影響評価と物理線量評価を行う。ポリマーゲル線量計で求めた、深さ位置での線量データと比較して線量と損傷応答の相関についても求める。放射線照射は単回の照射だけでなく、複数回分割照射等も試み、その照射方法による細胞影響評価についても検証を試みる。
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Causes of Carryover |
細胞培養を可能とするポリマーゲル線量計開発において複数の候補作製や検証に時間がかかってしまい、研究がやや遅れている。新型コロナウイルスの影響もあり、必要な物品の購入に時間がかかったり、出張が制限されて回数が減少したりしたため、次年度使用額が生じてしまった。 物品費としてポリマーゲル線量計作製用試薬、細胞培養用試薬と消耗品、ポリマーゲル線量計容器の購入、DNA損傷応答因子の抗体等に用いる。旅費は他機関の研究者との打ち合わせや、照射実験での出張等に用いる。人件費・謝金は実験解析の依頼等に用いる。
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