2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K16836
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
坂口 雅州 日本大学, 医学部, 准教授 (70599349)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 前立腺癌 / ポリアミド / 放射線感受性 / Ku80 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では既に前立腺癌で報告されているKu80のプロモーター領域に存在するSp1結合配列に対して特異的に結合するポリアミドを開発し、前立腺癌細胞におけるKu80発現への影響、増殖抑制効果、ならびに放射線感受性を明らかにすることである。 Ku80のプロモーター領域内に存在するSp1結合配列を標的とした特異的PIポリアミドを作製し、ポリアミドの標的配列への結合能を検討した。結合能の評価方法は、①Sp1結合配列のプローブとKuポリアミド、②Sp1ミスマッチ結合配列プローブとKuポリアミド、③Sp1結合配列のプローブとネガティブコントロールポリアミド、④Sp1ミスマッチ結合配列プローブとネガティブコントロールポリアミドの4群とした。また、ネガティブコントロールポリアミドとは、前述のSp1結合配列に結合せず、かつ生理的活性を持たないポリアミドとした。 ポリアミドの標的配列への結合能を確認、ヒト前立腺癌細胞LNCaPおよび、同細胞より作製したホルモン抵抗性前立腺癌細胞株にFITC(fluorescein isothiocyanate)ラベル付きPIポリアミドを投与し、核移行性を検討している。前立腺細胞株に放射線2Gyの照射と作製したKuポリアミド投与を行い、24時間後にSp1の抗体を用いたクロマチン免疫沈降を行い、Ku80の転写調節領域への結合力を確認している。 ヒト前立腺癌細胞株LNCaP細胞および、同細胞より作製したホルモン抵抗性前立腺癌細胞株を、作製したKuポリアミドを投与した群とSp1結合配列と異なる配列を標的とし、生理的な活性を持たないことが確認されているPIポリアミドをネガティブコントロールとして投与した群に分け、放射線2Gyとそれぞれのポリアミド投与を行い、各群でKu80の発現量測定をウエスタンブロット、RT-qPCRを用いて確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ウエスタンブロット、RT-qPCR、放射線照射を行う機器に関しては、研究代表者が所属する日本大学医学部内にあるリサーチセンターが所有しているが、新型コロナウイルスの蔓延のため、研究棟への出入り、実験室の使用時間や人数を他部門、当講座内で調整する必要が生じている。ポリアミドの標的配列への結合能の評価にはネガティブコントロールを含めた4群の比較が必要で時間を要している。また、ポリアミドの転写調節領域への結合力は、24時間後にクロマチン免疫沈降で確認するため、実験開始から結果確認の日程調整が必要となっている。また、本研究は前立腺癌の細胞株に照射を行う必要がある。前立腺細胞株は泌尿器科分野から提供可能であり、問題はないが、照射装置の使用調整が遅延の一因となっている。 PIポリアミドの作製は研究計画書の通り、専任の技術者に助言を受けながら行っていたが、専任技術者の異動が生じたことにより、実際の作製に関しては、オンラインなどを含めた指導が中心となり、技術者からの直接の指導、ポリアミド作製が難しくなったことも影響している。 また、新型コロナウイルス診療のため、令和2年4月より診療と研究・実験の配分が大きく変化した。研究者自身が専門とする放射線治療の診療以外に、新型コロナウイルス対応の負担が増加し、実験、研究の時間を削減せざる負えない状況になっている。放射線増感剤の実績のある、当講座医師も新型コロナウイルスの対応により、実験や助言をもらう上で日程の調整が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの蔓延や専任技術者の異動があり、専任技術者によるポリアミドの作製や実験を行うための対面協議は難しくなったため、オンライン協議を有効活用し、実験を遂行していく。泌尿器科分野からの前立腺癌細胞株の提供は問題ないため、研究棟や照射装置の使用の調整を行い、実験を継続できる状況にある。ポリアミドの設計や合成は当講座や泌尿器科分野の経験者の助言を受けて実験を継続する。研究代表者の診療体制と実験については、実験計画時の配分に近づけるよう、当講座内で調整を行う。実験棟や実験機器を使用できる期間に優先して使用できるように診療を調整する。 今後はPIポリアミドによる前立腺癌の放射線感受性への影響を確認する予定である。作製したKuポリアミドもしくはネガティブコントロールポリアミドを放射線照射したLNCaP細胞、および同細胞株より樹立したホルモン抵抗性前立腺癌細胞株に投与し、細胞増殖能、細胞遊走能をそれぞれ、MTSアッセイ、Cell migration assayにて評価する。まず、2Gyにて上記検討を行うが有意な結果が得られれば、放射線照射を0.1, 0.5, 1.0, 1.5, 2.0, 4.0 Gyに分けて行い、より少ない照射量で有意な効果が得られるかを確認する必要生じる。放射線照射の実験回数の増加とその確認が必要となるため、より実験に時間を費やすことが予想される。この実験を行う時期を考慮して、実験棟、照射装置の使用調整、診療分担の調整を事前に行っておく必要がある。
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Causes of Carryover |
実験の遂行が遅延しているため、初年度に計上している試薬代、抗体代、消耗品代、ポリアミド合成代が減額となっている。実験機器は当施設で有するもの使用しているため、新たな追加費用は生じていない。 今後継続する実験において、PIポリアミドのDNA結合能の確認にはクロマチン免疫沈降(ChIP)を使用、標的遺伝子発現抑制の検討ではウエスタンブロット、RT-qPCRを用いて測定が必要であり、実験を遂行していく過程で、当初の予定通り消耗品を中心とした支出が生じると思われる。ポリアミドや増感剤の実験実績が当施設、当講座においてあり、それを元に遅延なく進行した場合を想定し、費用を計上しているが、実験の不備や結果の再確認で複数回使用することがあり、支出が生じると思われる。 また次年度はヌードマウスの購入を中心として費用を計上しているが、新規PIポリアミドによる前立腺癌の放射線感受性への影響の確認をMTSアッセイ、Cell migration assayにて評価し、Ku80を特異的に抑制する市販のsiRNAを購入して比較検討が必要となる。次年度以降もヌードマウス購入以外に、実験の遂行において消耗品の費用があるため、支出が生じ請求助成金を使用することになる。
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