2020 Fiscal Year Research-status Report
IKZFファミリーの協調的な転写制御の異常によるリンパ球分化障害の病態解明
Project/Area Number |
20K16884
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
山下 基 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (70869122)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 先天性免疫異常症 / 原発性免疫不全症 / リンパ球分化 / 転写因子 / ヘテロダイマー |
Outline of Annual Research Achievements |
IKZFファミリーの転写因子は血球の分化に重要な役割を果たすことが知られている。IKZFファミリーで最も有名なIKAROSはB細胞欠損症や分類不能型免疫不全症の原因として知られ、今まで100例近い症例数が報告されている。我々は新しいB細胞欠損症の原因としてIKZFファミリーの転写因子であるAIOLOSのミスセンス変異を同定した。患者変異をノックインした変異マウスモデルの解析によって、変異AIOLOSはIKAROSとヘテロダイマーを形成することでIKAROSの機能を障害し、B細胞分化障害を起こすということを明らかにした。本研究では、我々の同定したAIOLOS異常症と同様にIKZFファミリーのミスセンス変異により、他のIKZFファミリーとのヘテロダイマーの形成を介してリンパ球分化障害を引き起こしうるのか解明すること、またその詳細な病態を解明することを目的とする。 今年度はAIOLOSをノックアウトしたヒトB細胞株に我々の同定したAIOLOSの変異を導入して、AIOLOSのChIP-seq解析により変異AIOLOSのDNA結合特異性の変化を検討した。変異AIOLOSはDNA結合能の特異性が変化し、異常配列に強い親和性を示すことが明らかとなった。 今後は、先天性免疫異常症や自己免疫疾患で同定されたIKAROSの変異や今後同定されるであろう他のIKZFファミリーの変異を同様の系を用いて評価する。それぞれの変異によるDNA結合能、結合特異性の変化を検討し、疾患の表現型との関連と併せてこれらの変異がリンパ球分化に与える影響に付いて検討を進める。さらには同定された変異をノックインした変異マウスモデルの作成・解析や、これらの変異タンパクの二量体化障害を遺伝子編集により誘導することにより二量体化を障害してリンパ球分化の回復を検討することによりこれらの疾患の遺伝子治療の基盤開発を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、IKAROS、AIOLOSの内在性発現のない細胞株に、IKAROS及びAIOLOS(野生型と我々の同定したAIOLOS変異)を強制発現し、免疫共沈降によりこれらがヘテロダイマーを形成することを確認した。また、AIOLOSをノックアウトしたヒトB細胞株に我々の同定したAIOLOS変異を変異を導入してAIOLOSのChIP-seqを行い、野生型のAIOLOSと変異AIOLOSのゲノムワイドな結合配列、結合部位を比較した。変異AIOLOSは野生型のAIOLOSのDNA結合配列とは異なる異常配列に対して強い親和性を示すことが明らかとなった。今後はさらにこの結合配列の変化と結合部位の変化がどのような生理的意義を持つかについて、ChIP-seqの二次解析を進める。今回確立したシステムはさまざまなAIOLOS変異体についてそのゲノムワイドな結合傾向、結合配列について評価することのできることが期待できる。 現在、AIOLOSをノックアウトしたヒトB細胞株にAIOLOS(野生型、変異体)とともにIKAROSを導入する系の確立を目指している。この系で、AIOLOSに加えてIKAROSのChIP-seqを行うことによって、変異AIOLOSがIKAROSのゲノムワイドな結合に対する影響を評価することができると期待される。 また、C末端側の二量体化ドメインを削る AIOLOS変異体を作成し、免疫共沈降によりIKAROSとのヘテロダイマー形成が阻害されることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
In vitroでは、現在のAIOLOSノックアウト細胞株を用いたChIP-seqの系を用いて、我々の同定した変異以外にも、今後報告されるAIOLOS異常症に同定される変異に関して同様の解析を行い、変異の違いによって起きるゲノムワイドな結合の差と患者における表現型の差の比較からその生物学的な意義やリンパ球分化に与える影響を明らかにする。 また、同様の系を用いてIKAROSや他のIKZFファミリーのゲノムワイドな結合を変異AIOLOS存在下、非存在下で比較することにより、ヘテロダイマーを介した変異AIOLOSによる他のIKZFファミリー分子に与える影響とリンパ球分化に及ぼす影響を明らかにする。 AIOLOS以外にも、既に多く同定されているIKAROS欠損症の既知の変異に関して同様の検討を行うことで変異の位置や変異するアミノ酸によりどのような異なる病原的意義を持つのかということを検討する。特にリンパ球分化に重要とされるAIOLOS、IKAROSを重点的に解析するため、CRISPR/Cas9 などの遺伝子編集技術を用いたAIOLOS、IKAROSダブルノックアウト細胞株の作成も進める。 これらのin vitroの解析で、リンパ球分化の障害をきたすと考えられる変異については、ノックインマウスを用いた詳細なリンパ球分化障害の病態解明を行う。さらには二量体化を障害するような遺伝子編集をこれらのノックインマウスに施すことによって遺伝子治療の基盤開発を行う。
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Causes of Carryover |
次世代シークエンサーを用いた、ChIP-seq解析を次年度に繰り越したため次年度使用額が生じた。 次年度はIKAROS、AIOLOSダブルノックアウト細胞株の作成やChIP-seq解析にこれらの費用を充てる予定である。
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