2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K16967
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
小田桐 直志 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (10623241)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肝がん / 化学療法 / 免疫治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝星細胞の老化関連分泌因子であるIL-8を含むサイトカインの血中濃度と肝細胞癌患者における化学療法との関連性に着目した。現在、切除不能肝細胞癌に対してはアテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法(Atezo+Bev)が第一選択として行われている。2020年12月から2022年8月にかけて、当科においてAtezo+Bevを導入した切除不能肝細胞癌38例を対象とし、治療開始前と治療開始後4-7日における血液検体を用いてサイトカイン19種類(EGF、G-CSF、GM-CSF、IFNγ、IL-1b、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12P70、IL-13、MCP-1、MIP-1α、MIP-1β、TNFα、VEGF)の血漿中濃度を測定し、治療開始後早期におけるサイトカイン濃度の変化とAtezo+Bevの治療効果や有害事象との関連について解析した。投与前と投与後4-7日後で血漿中濃度に変化のあったサイトカインを解析したところ、G-CSF(p=0.0231)、MCP-1(p<0.001)、TNFα(p=0.0024)、VEGF(p<0.001)に有意な変化が見られた。治療効果判定が行われた34例において、最良治療効果がCR/PRの群(n=14)は、SD/PDの群(n=20)に比較して治療開始前のG-CSF(2.67 vs 1.70 pg/mL, p=0.003)と治療開始後のG-CSF(9.13 vs 1.70 pg/mL, p=0.022)・MCP-1(249.84 vs 196.70 pg/mL, p=0.042)の濃度中央値が各々高かった。これまでの検討ではIL-8とAtezo+Bevの治療効果との関連性を見出すことはできなかった。しかし、血液中のサイトカイン濃度は肝臓局所における濃度変化を反映しているとは限らず、肝内局所における濃度変化を理解する必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大に伴う実験時間の制約などから実験計画に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
①老化ヒト肝星細胞より分泌されるIL-8の機能解析(in vitro):老化ヒト肝星細胞(HHSteC)と好中球(HL-60など)との共培養による細胞遊走アッセイを行い、好中球遊走能に与える影響を調べる。また、ヒト類洞内皮細胞(LSEC)を用い、老化ヒト肝星細胞と共培養を行い、内皮細胞の増殖に与える影響を調べる。また、内皮細胞の遊走アッセイやチューブ形成アッセイにより、内皮細胞の遊走能や管腔形成能に与える影響を解析する。さらには、IL-8 siRNAやrecombinant IL-8を用いることでもこれらの影響を検証する。老化肝星細胞と肝がん細胞(HepG2、Li-7、HLEなど)を共培養することでその増殖への影響を評価する。また、IL-8 siRNAやrecombinant IL-8を用いて検証する。 ②ヒト肝疾患症例での老化肝星細胞の解析、肝がん化学療法の治療効果の検証(in human):慢性肝疾患患者の肝生検組織や手術標本を用いて、細胞老化マーカー(p21、p16)と肝星細胞マーカー(αSMA・CYGB)を指標として、免疫染色法による老化肝星細胞の同定を試みる。また、炎症細胞浸潤との関連も解析する。さらに、患者の経過(患者背景、治療内容、組織所見など)との関連性についても解析する。
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Causes of Carryover |
実験計画に遅れが生じているため、予定としていた使用額に達せず、次年度使用額が生じた。
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