2020 Fiscal Year Research-status Report
レドックス制御因子Nrf2を活性化するグルコラファニンの糖尿病腎症改善効果の検討
Project/Area Number |
20K17271
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
別所 瞭一 旭川医科大学, 大学病院, 医員 (10869358)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 糖尿病腎症 / Nrf2活性化剤 / グルコラファニン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、糖尿病モデルマウスとヒト近位尿細管上皮培養細胞を用い、レドックス制御因子Nrf2(NF-E2-related factor 2)を活性化するグルコラファニンの腎保護作用およびその詳細な分子機構を解明することである。 動物実験では、高脂肪食およびストレプトゾトシン投与により誘導した糖尿病群モデルマウスに対するグルコラファニンを投与実験を行った。糖尿病群と非糖尿病群、およびグルコラファニン投与群と非投与群より、血液・尿試料と腎組織を採取した。今後生化学的検査や、腎組織学的評価により、Nrf2活性化剤グルコラファニンの腎保護効果を検証し、腎組織の遺伝子および蛋白解析により、分子レベルでの作用機構を検討する。さらに、Nrf2ノックアウトマウスによる実験を開始しており、一連の検討により得られた所見が、転写因子Nrf2を介した作用か、Nrf2非依存的な作用かを検討する。 一方、ヒト近位尿細管上皮培養細胞を用いて、Nrf2活性化剤スルフォラファンが、糖尿病腎症の病態形成因子の一つである脂肪毒性に対して与える影響を検討した。スルフォラファンは、パルミチン酸により誘導された炎症性サイトカインの発現を抑制した。また、スルフォラファンはミトコンドリア転写因子TFAM(mitochondrial transcription factor A)を活性化し、パルミチンにより誘導されたミトコンドリアDNAの細胞質への流出を抑制した。Nrf2活性化剤の腎保護作用機構として、ミトコンドリアDNAの保護作用や、飽和脂肪酸により誘導される炎症の抑制作用が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野生型マウスへのグルコラファニン投与実験は終了し、今後組織所見や遺伝子、蛋白発現の解析を行う予定である。また、ヒト近位尿細管細胞を用いた実験からは、Nrf2活性化剤がミトコンドリア転写因子TFAM発現を増強することなど、腎保護効果を説明し得る分子機構を明らかとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、動物実験により得られた血液・尿試料や腎組織所見の評価、腎組織の遺伝子、蛋白発現解析を行う。また、現在Nrf2ノックアウトマウスを使用した実験を行っており、これまでの一連の実験で得られた結果が、転写因子Nrf2を介した作用か、Nrf2非依存的な作用かを検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行の影響で、動物実験室への入室人数制限があり、動物実験の開始がやや遅れた。動物実験で得られた血液・尿試料の解析や、腎組織より抽出した遺伝子、蛋白発現解析に使用する試薬を2021年度に購入する必要があり、未使用額が生じた。未使用額は、次年度の物品費としての使用を予定している。
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