2022 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザウイルス感染重症化におけるヒストン修飾酵素SETDB2の機能解明
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20K17469
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
今北 菜津子 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (50865566)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / ウイルス性脳症 / ヒストン修飾酵素 / SETDB2 / 血管内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、インフルエンザ二次性肺炎による重症化マウスモデルの肺で、ヒストンH3K9をメチル化する酵素であるSET domain bifurcated 2(SETDB2)が有意に発現上昇し、またインフルエンザ脳症マウスモデルの脳血管内皮細胞でもSETDB2が有意に発現上昇することを見出だした。また、脳症マウスモデルにおいてSETDB2がcaveolin-1(Cav1)の発現を制御することが病態の悪化と関連する可能性を見出だし、インフルエンザウイルス感染症の重症化におけるSETDB2の関与を明らかにした。本研究はインフルエンザウイルス感染症の重症化に関わる分子メカニズムを明らかにし、重症化予測マーカーならびに新規予防法・治療法の開発に発展させることを目的とする。SETDB2を欠損するマクロファージは野生型の細胞と比較して、インフルエンザウイルス感染による炎症性サイトカインの発現が有意に上昇することを明らかにした。さらに、インフルエンザウイルス感染後にグラム陽性菌の細胞壁成分Pam3CSK4で刺激したin vitro二次性細菌感染モデルにおいても、炎症性サイトカインが著明に発現上昇することを明らかにした。一方、血管内皮細胞特異的にSETDB2を欠損するSETDB2 Tie2-Creマウスにインフルエンザウイルスを感染させたが、肺炎症や炎症性サイトカイン発現に対する有意な影響は認めなかった。また、インフルエンザ脳症モデルでは、マウスの脳浮腫の程度に個体差もあり有意差はみられなかった。そこで、より均質に脳症を誘導するためにウイルスRNAを模倣する合成二本鎖RNAであるPoly(I:C)を用いたウイルス脳症モデルを作製し、SETDB2が有意に発現上昇することを確認した。今後SETDB2 Tie2-Creマウスに対して本モデルで脳症を誘導し、SETDB2の寄与を検討していく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の流行に並行してインフルエンザウイルス感染症患者もみられたが、若年の軽症例が多かったため当院での受診患者は少なく、インフルエンザウイルス罹患患者の血清収集は2022年度は1例に留まり、臨床的な解析が進まなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
Poly(I:C)を用いたウイルス性脳症モデルにおいて、SETDB2 Tie2-Creマウスを用いて、脳血管内皮細胞におけるSETDB2の脳症発症のしやすさへの関与の有無について検討を進めると共に、有意な関与がみられるようであればその制御する遺伝子を探索する。インフルエンザウイルス罹患患者の血清収集を継続し、十分量の検体が集まった場合には血清中のSETDB2量などを解析する。
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Causes of Carryover |
遺伝子改変マウスの繁殖に時間を要したことに加え、新型コロナウイルス感染症の流行による試薬納入の遅延のため。
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Research Products
(3 results)