2022 Fiscal Year Research-status Report
SF-1を介した変異KCNJ5抑制による原発性アルドステロン症の治療開発
Project/Area Number |
20K17526
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
錦戸 彩加 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (30869350)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | KCNJ5 / 原発性アルドステロン症 / 副腎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦における原発性アルドステロン症の主病態であるアルドステロン産生副腎皮質腺腫(APA)における腫瘍発症機構解明の一因として、私達はカリウムチャネルの一つであるKCNJ5遺伝子の副腎皮質細胞における体細胞変異に着目して研究を進めてきた。前年度までに、KCNJ5遺伝子のサブクローニングを行い、副腎皮質特異的転写因子Steroidogenic factor-1(SF-1)が、KCNJ5遺伝子プロモーター上のSF-1応答領を介して遺伝子発現制御していることや、KCNJ5遺伝子発現が副腎皮質球状層にほぼ限局していることを見出し、副腎癌細胞由来のH295R細胞株を用いて抗SF-1抗体によるChIP(クロマチン免疫沈降)アッセイを施行し、KCNJ5遺伝子プロモーター領域のSF-1応答配列へのSF-1のrecruitmentを確認してきた。令和4年度は、私達が既に作製・樹立しておいた変異KCNJ5恒常的発現H295R細胞株と、対照群としての野生型KCNJ5恒常的発現H295R細胞株から、それぞれRNAを抽出し、Qualityチェックの後、cDNAマイクロアレイ解析を施行した。解析結果を元にパスウェイ解析やGO解析を行い、変異KCNJ5遺伝子によって発現量が大きく変動する遺伝子群を網羅的に解析した。また変異KCNJ5恒常的発現H295R細胞株と野生型KCNJ5恒常的発現H295R細胞株の継代培養を継続し、経時的な形態変化を確認した。また、私等が既に樹立し、保有している変異KCNJ5ノックインマウスの継代と観察を行なった。生後6月齢までの観察では、野生型マウスと比較しても変異KCNJ5ノックインマウスの副腎には肉眼的には腫瘍性変化を認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、変異KCNJ5恒常的発現H295R細胞株と野生型KCNJ5恒常的発現H295R細胞株から抽出したRNAを用いてのcDNAマイクロアレイ解析結果から、変異KCNJ5遺伝子によって発現量が増大した遺伝子に副腎アルドステロン合成酵素であるCYP11B2が含まれており、変異KCNJ5導入によるアルドステロン産生の増大を確認できた。さらに樹立した細胞株においては、副腎皮質特異的転写因子Steroidogenic factor-1(SF-1)に対する抗体によるChIP(クロマチン免疫沈降)アッセイを施行し、KCNJ5遺伝子プロモーター領域のSF-1応答配列へのSF-1のrecruitmentを確認できた。以上から、SF-1によってKCNJ5遺伝子発現が増強され、そのために副腎皮質におけるアルドステロン産生が亢進するという、研究当初の私達の仮説を立証するモデル細胞株を樹立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
変異KCNJ5恒常的発現H295R細胞株と野生型KCNJ5恒常的発現H295R細胞株を用いたcDNAマイクロアレイ解析の結果判明した、変異KCNJ5遺伝子によって発現量が大きく変動する遺伝子群の蛋白レベルでの発現解析を、細胞株より抽出したWhole cell extractを用いてウェスタンブロット解析を行う。また私達はアルドステロン産生皮質腺腫の外科的摘出検体を保存しており、これら腫瘍におけるKCNJ5遺伝子体細胞変異の有無については個々の症例で解析済みである。これら腫瘍検体を用いて抗SF-1抗体によるin-vivo ChIPアッセイを行い、細胞株実験で得られた結果を検証する。また外科的摘出検体を用いての、次世代シークエンスによる解析を検討する。保有する変異KCNJ5ノックインマウスの継代と解析を継続する。
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Causes of Carryover |
細胞株の細胞培養費用が必要となる。また細胞株を用いての種々のアッセイのための試薬購入費用が生じる。また次世代シークエンスを行うための費用が必要となる。
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