2020 Fiscal Year Research-status Report
母親由来キメラ細胞の定量的解析による胆道閉鎖症の病因究明と予後予測研究
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20K17588
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
桝屋 隆太 宮崎大学, 医学部, 助教 (90448572)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 胆道閉鎖症 / maternal microchimerism / リアルタイムPCR |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は胆道閉鎖症(Biliary atresia, 以下BA)は出生後に肝内・肝外胆管が不可逆的に閉塞し、黄疸、灰白色便、肝機能障害を呈する原因不明の疾患である。肝門部空腸吻合術によって多くの患児で黄疸消失、長期生存が得られるようになったが、進行する門脈圧亢進症や反復する胆管炎などのため、成人までに約半数が肝移植を必要とする難病である。 BAの病因としてウイルス説や免疫異常説などが提唱されているが、発症のメカニズムはこれまで明らかにされていない。 我々はBAの発症機序において、妊娠期間中に母親の細胞が経胎盤的に胎児に迷入し生着するMaternal microchimerismが関与するという仮説に基づき本研究を立案した。BA発症の有無あるいはBA患児の予後と、末梢血中の母親由来キメラ細胞の有無との相関について明らかにすることを目的として、BA患児および非BA同胞の末梢血中の母親由来細胞のDNAの定量を行った。 研究協力施設において、BAに対し肝門部空腸吻合術を行い外来経過観察中の患児、母親、および非BAの同胞を対象とし、静脈血を用いてHLAアレルを同定することで、母親のHLAのうち児に遺伝していないもの(NIMA: non-inherited maternal antigen)を同定した。続いてBA患児・非BA同胞の静脈血を採取してBuffy Coatおよび血漿からDNAを抽出し、NIMAのDNAをリアルタイムPCRで定量することで、末梢血中に含まれる母親由来キメラ細胞の定量分析を行った。 BA患児を予後良好群、予後不良群に分けて上記PCR結果について群間比較したところ、予後不良群ではBuffy Coat中に母親由来キメラ細胞が高頻度に検出される傾向にあることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた患者家族数の約3分の1に対してリアルタイムPCR解析を完了しており、検体採取に関しては約半数で完了している。対象となる患者家族数を増やしてさらに解析を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
各患者および家族に対して、児と母親との免疫学的寛容の評価を目的に、混合リンパ球培養試験を行って、PCR結果およびBAの予後との照合を行い、結果を解析して行く予定である。
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Causes of Carryover |
HLA検査、DNA抽出、リアルタイムPCR、混合リンパ球培養試験の費用として使用する予定である。また各学会、研究会の参加費、論文執筆の際の英文校正費用および掲載費としての支出を予定している。
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