2020 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子発現マッピングとメタボロミクスマッピング統合による膵癌組織微小環境の解明
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20K17622
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
寅田 信博 九州大学, 大学病院, 臨床検査技師 (00398075)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遺伝子発現マッピング / メタボロミクスマッピング |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌は癌の中でもっとも予後不良な癌の一つで、その特徴の一つにdesmoplasiaと呼ばれる豊富な間質増生があり、治療抵抗性や、薬剤送達率低下への関与が明らかにされている。腫瘍微小環境は、癌の増殖・進展に影響を与えているという報告もあり、癌細胞だけでなく、免疫細胞やfibroblastなど微小環境を含めた検討の重要性が増している。生体由来腫瘍サンプルの遺伝子発現解析は、これまで、主にWhole cell lysateが用いられており個々の細胞の情報が考慮されていなかった。本研究の主な目的は、生体由来サンプル等を用いて遺伝子発現と、発現した遺伝子の物質的最終表現型である代謝産物および組織像・免疫染色などの情報を統合して評価し、組織微小環境の解明を行うことである。 組織微小環境の解明のため、遺伝子発現マッピングに先立って腫瘍組織を単細胞レベルまで分離し、heterogeneityを解析するSingle cell RNA sequenceを行い、neoadjuvant chemotherapy(NAC)後の食道がん部組織において、非NAC群よりも CD8+ T細胞が多いことを明らかにし、免疫学的な変化と関連する可能性を見出した。また、膵癌において、腫瘍微細環境のコンポーネントの1つである癌関連線維芽細胞量と膵癌分化度の関連を調べたところ、ヒト膵癌オルガノイドを用いた実験で、腫瘍分化度が高いほど周囲のCAFが多いことを確認し、微小環境因子を介した癌の増殖に寄与している可能性があることを示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝子発現マッピングに先行して、Single cell RNA sequenceを行い細胞単位での遺伝子発現情報での検討を行ったためやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子発現マッピングは、得られる情報は多いが、スポットに含まれる複数の細胞の情報を含み、結果の解釈に苦慮することが多いため、Single cell RNA sequenceを先行して細胞単位での遺伝子発現情報での検討を行っている。これらの結果を参考にしながら、今後遺伝子発現マッピングも並行して進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
Single cell RNA sequenceを先行して細胞単位での遺伝子発現情報での検討を行っており、研究計画に遅れを生じているため。 次年度は引き続きSingle cell RNA受託解析や高性能計算機使用料などに使用予定である。
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