2022 Fiscal Year Annual Research Report
高ヒスチジン糖タンパク質に着目した肺線維化疾患に対する新規治療法の開発
Project/Area Number |
20K17747
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
塩谷 俊雄 岡山大学, 医学部, 客員研究員 (90851246)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高ヒスチジン糖タンパク質(HRG) / 間質性肺炎 / 肺線維症(IPF) / 肺移植 / 原発性移植片機能不全(PGD) / 虚血再灌流障害(IRI) / 新規治療 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
血漿中の高ヒスチジン糖タンパク質(HRG)濃度は肺線維症(IPF)群において健常群より有意に低下していた。本研究の結果より、血漿中のHRGは慢性炎症による肺疾患の代表であるIPFにおいても低下しており、IPFの新たな治療標的となり得ることが示唆された。また、肺移植後患者において血漿中のHRG濃度は肺移植後3日目に最も高値となる傾向があり、特に肺移植後3日目における血漿中のHRG濃度は重度原発性移植片機能不全(PGD)群において有意に低下していた。肺移植後3日目における血漿中のHRG濃度を、肺移植後全生存の指標としてカットオフ値(34.4 μg/mL)を設定したところ、血漿中のHRG濃度が34.4 μg/mL以上の群(HRG高値群)はHRG濃度が34.4 μg/mL未満の群(HRG低値群)と比較して、肺移植後全生存期間(OS)およびCLAD非発症期間(CLAD-free survival)において有意に良好であった。本研究の結果より、肺移植後3日目における血漿中のHRG濃度はPGD重症度と関連しており、また、肺移植後の長期成績とも関連していた。血漿HRG濃度の測定は低侵襲なPGDの新たなバイオマーカーとなり得る可能性が示唆された。肺移植後にHRGを補充することによって、PGDの発症を抑制できる可能性がある。さらに、マウス虚血再灌流障害モデル(I/R)においても血漿中のHRG濃度は有意に発現の低下を認めた。本研究の結果より、IRIによる急性肺障害においても血漿中のHRG濃度は低下していた。IRIはPGDの原因になる病態であり、HRGの投与というPGDに対する新規治療法に応用できる可能性がある。
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