2020 Fiscal Year Research-status Report
脳梗塞に対応する血清抗体マーカーによる発症予測と病型診断
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20K17953
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
吉田 陽一 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (30861322)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳梗塞 / 抗体マーカー / 動脈硬化 / DNAJC2 / SERPINE1 / トルソー症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳梗塞に対応する抗体マーカーの臨床応用を目的に、脳梗塞診断に寄与するマーカーの同定を続けた。まず、動脈硬化に関連するマーカーとして学会発表してきた熱ストレスタンパクの一種DNAJC2に関する検証を進め、Heliyon誌に掲載された。脳梗塞のみならず、急性心筋梗塞、糖尿病、慢性腎臓病においても有意な上昇を認めるマーカーであり、タンパク機能解析からも動脈硬化との強い関連が示された。続いて、血栓性素因子であるSERPINE1を脳梗塞に関与する新たなマーカーとして同定し、日本脳神経外科学会学術総会で発表した。血管内皮細胞由来のSERPINE1はplasminogen activator inhibitor-1として知られ、脳梗塞の原因となる血栓の溶解を阻止する働きがあることから着目される。実際、脳梗塞患者において有意なマーカー上昇を認めることが確認できており、現在論文執筆中である。これらにより、複数の脳梗塞関連マーカーを組み合わせた診断が可能となった。約3万人を対象としたコホート研究における脳梗塞患者血清を用いて、今後検証していく。 また、脳梗塞の病型分類を目指した試みとして、新たにトルソー症候群に着目した。トルソー症候群は悪性腫瘍に関連した脳梗塞であり、動脈硬化とは異なる発症機序であることから、新たな抗原候補タンパク質が存在すると考えている。マーカーを同定するにあたり検体収集を行い、1年間で20検体を収集できた。これらを用いて、当研究室で確立している発現クローニング法を用いたスクリーニング検査へと進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度計画の②動脈硬化関連マーカーによる発症予測の確立について、研究概要で述べた通り複数のマーカーを同定し、予測精度の向上が可能となった。予定通り、これらのマーカーを組み合わせた発症予測の検証へと移行する。 一方、令和2年度計画の①新たな抗原候補タンパク質の同定について、トルソー症候群に関する抗原候補を抽出すべく検体収集は行ったが、スクリーニングとして行う発現クローニング法に必要なニトロセルロース膜の国内受注が停止しており、実験を進められなくなった。現在手配中であり、入手し次第スクリーニングを行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
脳梗塞に対応する抗体マーカーを組み合わせることにより、脳梗塞発症予測の実用化を目指す。具体的には、動脈硬化関連マーカーとしてDNAJC2、脳虚血マーカーとして発表したPDCD11、新たな脳梗塞関連マーカーであるSERPINE1を中心として、これまでに同定した脳梗塞関連抗体マーカーを用いる。脳梗塞患者血清としては約3万人を対象としたコホート研究において、実際に脳梗塞を発症した患者血清を用いて検証するとともに、前向き研究にも着手する。 また、各種脳梗塞の病型分類を目指し、現在検体収集を行っているトルソー症候群に特徴的な抗体マーカーを同定する。発現クローニング法を用いたスクリーニングにより抗原候補タンパク質を抽出し、健常者またはアテローム血栓性脳梗塞患者血清をコントロールとした検証を行う。検証に際して、当研究室が保有する各種がん患者血清も有用と考えている。さらに、前述の前向き研究に伴い、血栓症か塞栓症かの判別についても検証する。
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Causes of Carryover |
国内生産が停止した必要物品があり、その予算が次年度へ繰越となった。 学会への参加がWEBに切り替わり、旅費が発生しなかった。
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