2021 Fiscal Year Research-status Report
網羅的エピジェネティクス解析によるグリオーマの悪性化機構の解明
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20K17972
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
三月田 祐平 九州大学, 大学病院, 助教 (00848640)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | DNAメチル化 / グリオーマ |
Outline of Annual Research Achievements |
九州大学脳神経外科脳腫瘍研究室で所有するグリオーマ凍結標本のうち、H3F3A遺伝子変異をもつサンプルからDNAを抽出し、改良型PBAT法を用いて作成したライブラリを外部機関のNGSに配列決定を委託して配列データを取得した。このデータから解析用コンピュータを用いてリファレンスゲノムにマッピングし、データを集計して各サンプルのメチル化率を算出した。比較対象として国際癌ゲノムコンソーシアム(ICGC)の公式データベースや他機関からグリオーマや骨腫瘍のWGBSあるいはメチル化アレイデータを取得し、グリオーマの各サブタイプのDNAメチル化パターンの比較と特異的な領域を抽出した。グリオーマにおいて得られたメチル化データから独立性成分分析などを用いてH3F3A遺伝子G34R変異特異的なメチル化シグナルを同定すると、このシグナルがCpGアイランドの高メチル化領域に集約することを特定した。さらにこのシグナルはG34変異をもつ骨腫瘍においても変異特異的シグナルとして共有されていることを確認した。G34V変異グリオーマ株と抗H3.3および抗H3.3G34V抗体を用いたChIP sequencingにおいて、この変異特異的なメチル化シグナルはG34変異ヒストンH3.3の局在と関連性をもつことが分かり、この細胞株を用いてこのG34変異をノックアウトするとG34変異特異的なメチル化シグナルが減弱することが分かった。これらの知見からG34変異ヒストンH3.3の局在部位の特徴や変異を来した際のDNAメチル化に及ぼす影響、さらに変異体の除去によってその変化が一部逆行性をもつことが示唆された。上記のような解析技術を応用し、稀少な臨床サンプルを用いて腫瘍特異的なメチル化シグナルの同定手法を確立中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床サンプルおよび細胞株を用いた実験およびデータ解析が終了し、H3F3AG34変異が有する特異的メチル化シグナルについて成果を論文化し、出版済である。またこれを応用した臨床サンプルを用いたメチル化シグナルの同定について学会(脳腫瘍学会2021)で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
従来の方法でメチル化解析の困難な低悪性度グリオーマ症例について、腫瘍と正常組織の混在したメチル化データより腫瘍特異的なメチル化シグナルの同定を企図している。また、腫瘍組織のみならず髄液中のcell free DNAを用いて同様のメチル化解析を行う。
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Causes of Carryover |
臨床サンプルを用いたメチル化アレイ解析を受託する際に8サンプルで66万円を必要とした。
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