2021 Fiscal Year Research-status Report
ペントースリン酸経路を基軸とした卵巣がん幹細胞の治療抵抗性獲得機構の解明
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20K18214
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山脇 芳 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (90650622)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 卵巣がん / がん幹細胞 / 3次元培養系 / プラチナ抵抗性 / ペントースリン酸経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
10例の卵巣がん患者由来スフェロイド細胞の新規樹立に成功し、卵巣がんスフェロイド細胞パネルを作成することに成功した。卵巣がんスフェロイド細胞を用いた77種類の抗がん剤に対する感受性試験の結果、プラチナ製剤への感受性がスフェロイド細胞によって異なることが明らかとなった。また、スフェロイド細胞をプラチナ製剤に対する耐性が強い細胞群と耐性が弱い細胞群に分類し、RNAシークエンスによって両群の遺伝子発現を比較検討したところ、耐性がある細胞群では、ペントースリン酸経路の律速酵素であるG6PDとそれに関与する一群の酸化還元酵素の発現が高く、それらの分子が卵巣がんのプラチナ製剤への耐性機序に関与していることを同定した。今回、スフェロイド細胞のin vitro増殖抑制実験およびスフェロイド細胞を腹腔内投与することにより作成した卵巣がん腹膜播種モデルを用いたマウス実験において、シスプラチンとG6PD阻害剤を併用投与することで、卵巣がんスフェロイド細胞のプラチナ製剤への耐性が解除されることを新たに見出した。さらに、過去に新潟大学医歯学総合病院で手術を受けた卵巣がん107症例のがん組織中のG6PDの発現を免疫組織化学染色により確認したところ、G6PDの発現の強さと患者予後(無増悪生存期間、全生存期間)に逆相関が認められることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記概要で記載した研究結果を論文としてまとめ、国際科学誌に投稿し掲載されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに樹立した卵巣がんスフェロイド細胞は10種以上にのぼるが、組織別にみるとまだ症例数が少ない現状である。同一組織内で多くのスフェロイド細胞を樹立し、さらに詳細な解析を計画する。また、今回用いた薬物感受性試験とオミックス解析を融合した解析手法は、他の薬剤における抵抗性に寄与する分子も同定できる可能性があり、他のがん種や薬剤での応用を検討したい。
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Causes of Carryover |
論文作成のために時間を割いたため、実験試薬等の消費が当初予定していたよりも少なかったため。
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