2020 Fiscal Year Research-status Report
甲状腺癌に対する分子標的薬併用内/外放射線治療法の開発
Project/Area Number |
20K18269
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
酒井 遥 関西医科大学, 医学部, 研究員 (80757609)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 甲状腺癌 / レンバチニブ / 放射線療法 / 併用療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、甲状腺癌に対する放射線療法と分子標的薬レンバチニブの相乗効果に着目し、両者の併用による抗腫瘍効果とそのメカニズムを検討した。分化型甲状腺癌細胞株(K1、FTC-133)に対し、ガンマセル放射線照射器(137Cs)を用いた外照射とレンバチニブの投与をおこない、単独群、併用群の細胞増殖率を 線量別、経時的に評価した。放射線外照射単独、レンバチニブ単独群のいずれも用量依存的に細胞増殖抑制効果を認めたが、両者の併用群において特に細胞増殖抑制効果は顕著であり、併用療法による相乗効果が示唆された。アポトーシス解析および細胞周期解析においては、併用療法群においてアポトーシスの誘導及びG2/M期での細胞周期停止が示唆された。さらに、LC-MS/MS法を用いた質量分析では照射後の甲状腺癌細胞において有意に細胞内レンバチニブ濃度が上昇しており、相乗効果のメカニズムとして照射による細胞内への薬剤取り込み亢進が寄与している可能性が示唆された。甲状腺癌ゼノグラフトモデルを用いたin vivo実験では、甲状腺癌細胞株(K1、FTC-133)を移植した担癌マウスに対しA.コントロール、B.放射線外照射のみ、C.レンバチニブのみ、D.外照射+レンバチニブの4群に分け、各群における腫瘍増殖抑制効果を経時的な腫瘍体積と摘出した腫瘍の重量測定により評価した。この結果、レンバチニブ/放射線療法単独と比べ、併用療法群においてより強い腫瘍増殖抑制効果を認め、併用療法による相乗効果が動物実験においても示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
甲状腺癌細胞およびゼノグラフトモデルを用いた実験において、レンバチニブと放射線外照射の併用療法により高い抗腫瘍効果が得られることが確認され、当初の研究計画通り順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
併用療法による相乗効果がin vitro/in vivoにおいて示され、メカニズムについてもある程度は解明できたと言えるが、シグナル解析等については検討の余地がある。またレンバチニブ(VEGFRやFGFRを阻害)による血管新生阻害作用を放射線療法が増強するか、あるいはレンバチニブが放射線増感作用を有するかどうかについては、今後検討する必要がある。今後はqPCRやウエスタンブロッティングを用いてVEGFRの下流(MAPK経路など)のシグナル解析をおこない、併用療法による相乗効果のメカニズムについてさらに詳細な検討をおこなう。また血管新生阻害作用についてもin vitro/in vivoの血管新生評価法を用いた解析をおこなう予定である(tube formation assayや、CD31を用いた免疫組織化学など)。
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