2020 Fiscal Year Research-status Report
KCNQ4遺伝子変異による細胞死という疾患モデルに立脚した蛋白機能解析系の確立
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20K18330
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
Principal Investigator |
小島 敬史 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 聴覚・平衡覚研究部, 研究員 (60528660)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 先天性難聴 / KCNQ4 |
Outline of Annual Research Achievements |
先天性難聴は出生児1000人に1人の割合で発症し先天性疾患の中で最も高頻度に発生する疾患の一つで、半数以上は遺伝子変異に起因する遺伝性難聴であるとされる。原因遺伝子の同定、解析は世界中で進められ、新たな遺伝性難聴の可能性がある原因遺伝子・変異が続々と報告されている。しかし、これらはデータベースから統計学的に算出されたもので基礎生物学的裏付けを欠いている物が非常に多く、効率的な変異蛋白機能評価法の開発が急務とされている。 KCNQ4遺伝子は常染色体優性遺伝形式を取る非症候性感音難聴DFNA2の原因遺伝子である。同遺伝形式の難聴では最も頻度が高い。加えてアジアで最も頻度の高いc.211delCは後天発症ながら進行性難聴により人工内耳導入が必要になる症例も散見され、KCNQ4遺伝子変異による難聴発症メカニズムの解析および治療法の同定は社会的意義が高いと言える。 我々は本遺伝子の野生型と3種類の蛋白切断型変異について、ヒト由来のHEK293T培養細胞とSleeping beauty transposon systemを用い、薬剤濃度依存性に目的蛋白を誘導できる安定細胞株を樹立した。この細胞株を用い、電気生理学的検査、および経時的細胞死観測系を行った。本遺伝子のコードする蛋白質は外有毛細胞底部に発現する電位依存性Kチャネルを形成し、病態として優性阻害効果もしくはハプロ不全によるチャネル機能不全が考えられていた。しかし、我々の実験により、今回提示した3種のバリアントにおいてはチャネル機能不全ではなく、直接的細胞毒性によってアポトーシスが誘導されていることが病因である可能性を示した。また、薬剤スクリーニングを行い、数種の薬剤がこの細胞毒性を和らげることを示した。以上の結果は国内外の学会で発表しており、現在論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は本遺伝子の野生型と、p.Q71fs、p.W242Xおよびp.A349fsの3種類の蛋白切断型変異に着目した。ヒト由来のHEK293T培養細胞とSleeping beauty transposon systemを用い、薬剤濃度依存性に目的蛋白を誘導できる安定細胞株を樹立した。電気生理学的検査では、野生型を誘導した細胞では静止膜電位の低下を認めたのに対し、短縮形バリアントでは静止膜電位の低下は認めなかった。ついで共免疫沈降検査を用い、野生型と短縮形バリアントでは複合体を形成しないことを示した。さらに、プレーリーダーベースでリアルタイムに細胞死を観測した。結果として、野生型は細胞死を起こさないのに対し、短縮形バリアントでは誘導するタンパク量に応じた細胞死を呈した。また、この細胞死はアポトーシスに関連しているものであることを示した。加えて既存の薬剤ライブラリーを用い、この細胞毒性を緩和できる可能性のある薬剤を探索した。上記の結果から、従来考えられていた優性阻害効果もしくはハプロ不全ではなく、直接的細胞毒性によってアポトーシスが誘導されていることが病因である可能性を示した。また、薬剤スクリーニングを行い、数種の薬剤がこの細胞毒性を和らげることを示した。以上の結果は国内外の学会で発表しており、現在論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は先天性難聴の原因遺伝子であるKCNQ4のバリアントについて、高効率な変異蛋白機能計測、解析、薬剤スクリーニングを可能にするプレートリーダーベースのアッセイ系の構築を目的とし、本研究を立ち上げた。 今回の実験により、我々はKCNQ4の特定の蛋白切断型変異が細胞毒性を示し、アポトーシスに関連した細胞死を呈し、特定の薬剤でその毒性が緩和されることを示した。チャネルを構成する蛋白の遺伝子バリアントが、直接的細胞毒性による病態を示すという報告は無く、そのメカニズムは明らかになっていない。メカニズムとして、バリアントによる異常たんぱくの蓄積が推測され、このメカニズムの解析を行いたい。方法としてアポトーシスやERストレスに関連した既存遺伝子をターゲットとしたqPCRによる解析を検討している。
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Causes of Carryover |
令和2年度より採択を受けた本研究は、令和1年度計画時点では1年目に米国や欧州の学会に現地参加し口演発表する予定であった。しかし、コロナウィルス感染症の大流行のため、海外学会に参加できなかったため、学会参加費用がかからなかった。
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Research Products
(3 results)