2020 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜TRPA1イオンチャネル発現解析に基づいた脈絡膜血管新生の新規治療戦略
Project/Area Number |
20K18354
|
Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
臼井 佑太 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (30816749)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | TRPA1 / 脈絡膜新生血管 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
滲出型加齢黄斑変性症における脈絡膜血管新生(Choroidal Neovascularization:以下CNV)での細胞膜イオンチャネル受容体transient receptor potential(以下TRP)ファミリーメンバーのTRPA1の役割を解明し、TRPA1を標的とした治療戦略の確立を目的とする。過去の所属での研究成果はCNV発症にはマクロファージを中心としたTGFなどのサイトカイン依存性の局所炎症が関与することを示した。代表研究者による予備的データでマウスではTRPA1欠失は局所の炎症性サイトカインの発現低下とともにレーザー誘発CNVの発育を抑制した。本課題では(1)TRPA1欠損マウスのレーザー誘発CNVの発育の抑制に関する詳細な病態解析、(2)血管内皮特異的TRPA1コンディショナル欠失マウスを作出とそこでのレーザー誘発CNV抑制の責任細胞の追究、さらに(3)炎症細胞特異的TRPA1欠失マウスを野生型マウスとの骨髄移植でTRPA1欠失の表現型への炎症細胞の関与の有無を明らかにする。最後にTRPA1欠失の表現型をTRPA1阻害薬で再現する。TRPA1欠失マウスでのレーザー誘発CNVの抑制の詳細な分子メカニズムの解明と表現型の責任細胞の同定から、TRPA1を標的とした新規のCNV治療戦略を提唱することを目的とする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)WTマウスに比べKOマウスにおいてCNVは有意に抑制されていた(P<0.05)。(2)WTマウスにおけるレーザー照射後の TRPA1は、レーザー照射3日後ではCD31と局在は一致しなかった。レーザー照射7日後では一部局在の一致を認めた。(3) WTマウスに比べKOマウスにおける脈絡膜組織では、1日後ではTGFβ-1、3日後ではMPOのmRNA発現を有意に抑制した(p<0.05)。(4) MPOの発現は認めたが、TRPA1との局在の一致は認めなかった。(5) WT骨髄-WTマウスとTRPA1KO骨髄マウス、KO骨髄⇒KOマウスとWT骨髄⇒KOマウスにおけるCNVでは有意差は認めなかった。WT骨髄-KOマウスのCNVはWT骨髄-WTマウスとTRPA1KO骨髄-WTマウスに比べて有意に抑制されていた(P<0.05)。KO骨髄-KOマウスのCNVはWT骨髄-WTマウスとTRPA1KO骨髄-WTマウスに比べて有意に抑制されていた(P<0.05)(6) PBS投与群の野生型マウスに比べHC-030031を投与したWTマウスにおいてCNVは有意に抑制されていた(P<0.05)。(7) Placonレンズを使用することにより、撮像中の白内障は抑制されたが、OCT、OCTAの再現性が難しく難航している。現在のレーザー条件ではOCT、OCTAの詳細な観察、比較検討は困難なのが現状である。
|
Strategy for Future Research Activity |
血管内皮特異TRPA1欠失マウスの作出とそこでのレーザー誘発CNVの発育の検討することと、 TRPA1欠失マウスと野生型マウスとの間での骨髄移植での炎症細胞の関与の評価 血管内皮特異的遺伝子Tie2プロモーターでドライブされるTie2-Creリコンビナーゼマウス(導入予定)とTRPA1-floxマウス(所属で繁殖中)の交配から血管内皮特異的コンディショナルTRPA1欠失マウスを作出し、CNVの発育に対する影響を上記の解析方法で検討する。 ヒト網膜微小血管内皮細胞を用いたin vitro実験 ヒト臍帯静脈内皮細胞を用いた血管新生研究におけるTRPA1の役割についての研究は所属研究室で報告(Usiu-Kusumoto K, et al. Exp Eye Res, 2019)したので、本計画ではヒト網膜微小血管内皮細胞を用いてTRPA1アンタゴニスト HC-030031添加群、アゴニスト Allyl isothiocyanate(AITC)添加T群と、非添加群での血管成熟度と関連因子の比較検討を行う。チャンバースライドまたは60 mm シャーレで同細胞にVEGF-A(10 mg/ml)またはTGFβ(1 ng/ml)添加して培養し、上記アゴニスト、アンタゴニスト添加群と非添加群で血管新生活性(tube構造形成)および上記のサイトカインシグナル分子のリン酸化を免疫組織化学とウエスタンブロット発現を比較検討する。
|