2020 Fiscal Year Research-status Report
Accessibility to diabetes care for Japanese elderly diabetic patients
Project/Area Number |
20K18871
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 理恵 筑波大学, 医学医療系, 特任助教 (60827418)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 2型糖尿病 / 高齢糖尿病患者 / 併存症 / 保健医療サービス利用可能性 / コホート研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
診療所が使用する糖尿病診療データベースから220人余りの患者についてデータ提供を受け、このうち高齢糖尿病患者148人を分析対象に、医療記録レビューを通じて施設ベースの後ろ向きコホート研究を実施した。 具体的には、2006年から2009年の間に診療所を初診した65歳以上の2型糖尿病外来患者について、通院を継続している患者と非通院となった患者ごとに、初診時と最終受診時の年齢、罹病期間、住環境、糖尿病の治療歴、治療中断歴、糖尿病の状態、身体計測値、併存症、処方のデータを抽出し、群間の差異を検討した。対象者148人のうち、65人(43.9%) がかかりつけ医への通院を継続し, 83人 (56.1%)が非通院となっていた。通院期間は各々、平均10.7±標準偏差1.0年、4.3±2.6年であった。非通院となった理由は順に、転院、死亡、治療中断、不明、その他であった。群内における臨床像の前後差は顕著であったが、群間での差異はなかった。年齢以外の項目において通院継続に対する有意性は見られなかった。 本研究の結果により、半数以上の高齢糖尿病患者が、病状によらず数年以内にかかりつけ医への定期通院を続けるかどうか懸念を抱いていると示唆された。さらに、データベースから取得できず今回は検討しえなかった患者の社会的状態、老年症候群を考慮する必要があると考えられた。これらの知見を、日本人高齢糖尿病患者の治療継続を支援する方策を検討する上での基礎資料として今後検討を進めていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖尿病診療記録を用いたメディカルレコードレビュースタディを予定通り実施したため、本研究課題の進捗状況はこれまでのところおおむね順調に進展している。本研究を通じて得られた高齢糖尿病患者における治療継続の実態や臨床像に関する結果及び考察は、研究成果として公表する予定である。さらに、過去の診療情報から取得できず今回検討しえなかった患者の社会的背景や老年症候群に関する調査を追加して行うこととした。
|
Strategy for Future Research Activity |
高齢糖尿病患者における治療アクセスの要因については、2019年以降新たに集積されている老年症候群や介護状況等に関する診療情報に基づき同一施設での医療記録レビューを引き続き行う。さらに患者が外来通院下で治療を継続できるかどうかを判断する際に重要視する項目については別途調査を行い、質問紙の原案を作成していく。現時点では、先行のメディカルレコードレビュースタディを実施した特定の診療所以外にも、受診環境等が異なる医療機関に対象施設を広げ、多様な患者のニーズを拾い上げることが課題となっている。当初の計画では、少数の高齢糖尿病患者を対象に、治療継続のための支援に患者の選好を取り入れるためのインタビュー調査を予定していたが、調査方法を自記式質問紙調査へ変更することで、複数の医療機関において患者の回答を十分に確保した上で、その結果を質的に集約することを計画している。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い感染予防対策を優先した結果、設備備品は必要最低限のものを揃えることができたが、旅費については学術集会参加や会議の目的で使用を予定していたものがオンライン会議へ変更となり支出しなかったこと、資料整理のための人材雇用を控えたため人件費を使用しなかったことが、次年度使用額が生じた理由に挙げられる。今年度使用額は、インタビュー調査を郵送法等の質問紙調査に変更するため、印刷複写費、通信運搬費に充当する予定である。また、研究成果の公表のため、国際誌への論文投稿の際の英文校正費、論文掲載料、学術集会、会議等への参加費用として使用していく。
|