2021 Fiscal Year Research-status Report
Accessibility to diabetes care for Japanese elderly diabetic patients
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20K18871
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 理恵 筑波大学, 医学医療系, 特任助教 (60827418)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高齢糖尿病患者 / 併存症 / 老年症候群 / 保健医療サービス利用 / 選好 / 行動インサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
診療データベースから抽出した診療記録を元に、高齢糖尿病患者における外来通院の継続期間と初診時の年齢、性、併存症、多剤処方との関連について、生存時間分析を用いて検討を行った。追跡可能であった高齢糖尿病患者128名において、通院期間は平均4年であった。初診時の年齢が75歳以上か否かによって通院継続期間に影響することが示唆されたが、それ以外の項目に有意な結果は見られなかった。老年症候群との関連については、同じくデータベースから抽出した400名余りの高齢糖尿病患者を対象に軽度認知機能障害の疑いの有無別に通院経過を調査したところ、初診時の臨床像には糖尿病合併症の罹患割合などに差異があったものの、通院5年目経過時点では両群の通院者数と臨床像に大差がないことが示された。これまでの研究結果から、高齢糖尿病患者の外来通院継続には、病状や老年症候群が強く関連しない可能性も考えられるため、通院継続の障壁や促進要因については、患者の社会的事情を踏まえ、当事者の主観的な選好を調査することにより、患者を主体とした受診環境の整備につなげる必要があると考えられた。 上記に加え、療養環境の調整に関する文献検討を新たに行い、糖尿病の自己管理の文脈における介入技法とその効果を集約した既存の系統的文献検討6件とそれらの分析対象となった26件の無作為化比較試験を概観した。患者の行動を望ましい方向に向かわせる環境調整の介入は、医療分野に浸透しつつある。糖尿病の自己管理においても、医療スタッフによる備忘通知や、測定機器を活用したオンライン上での教育介入が試行されており、中には患者の行動変容や臨床指標の改善効果を報告した例も含まれた。一方、これらは消費に係る行動を中心に検討されており、医療アクセスの観点からさらに議論を展開する必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メディカルレコードレビュースタディーと文献検討の知見を踏まえ、高齢糖尿病患者における治療継続のための受診環境の選好に関する予備的な調査を開始した。当初の計画から、インタビュー調査を質問紙調査とするなどの変更は生じているが、研究はおおむね順調に進捗している。これまでの研究成果をまとめ、関連の学会誌や学術集会での発表につなげられている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、予備調査を経て、高齢糖尿病患者における治療継続のための受診環境の選好に係る選択肢の属性と水準を集約し、質問紙原案の作成に取り組む。予備調査では、先行研究とは受診環境が異なる患者を対象としている。対象者の心身の負担を可能な限り軽減できるよう、関係組織や倫理委員会からの指導助言を得ながら調査方法を調整するなど、都度社会情勢に応じて柔軟に対応していく。また、調査に並行して研究成果の公表を滞りなく行うなかで、内外からの評価を受け、引き続き新たな情報を得て、研究内容を吟味していく。具体的には、高齢患者の特性を捉える目的で、比較対照として若年層を含めたインターネット調査の実施を検討している。そのため、当初の計画からの変更やそれに伴う進捗の遅延が生じる可能性がある。
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Causes of Carryover |
前年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症予防対策を優先したため、オンライン会議を積極的に利用したことで旅費の支出がなかったことと、資料整理のための雇用を控えたことによる人件費の支出がなかったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。これらの費用は、国際学会へのオンライン参加費用、成果公表のための論文英文校正費、研究資料の購入等に充当した。今後は、調査時に医療施設に立ち入る際の衛生用品の購入費用や印刷費、論文掲載料、インターネット調査経費等の支出を予定している。
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Research Products
(2 results)