2022 Fiscal Year Research-status Report
地域で生活する統合失調症をもつ人が「薬を飲まない」選択を考える時の主観的体験
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20K19099
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
川村 みどり 福井県立大学, 看護福祉学部, 教授 (20347363)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 薬物治療 / 統合失調症 / KJ法 / コンコーダンス |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度以来、COVID19感染拡大防止のため、外部の研究協力者と直接接触しない方法で、研究テーマに関連する文献検討を継続した。文献検討のために、専門職者が執筆した薬物治療に関する一般書籍を収集した。一般書籍を対象にした理由は、統合失調症を有する人(以下、統合失調症者)も入手可能な書籍であれば、統合失調症者の心理や行動に対して十分に配慮した説明がされていると考えたからである。そして、面接ガイドを作成する上で、援助者側の視点を把握する手立てとなるように、資料の整理比較を継続している。 2021年度は、ICN Congress 2021に参加して、COVID19流行前に収集したデータをまとめて、成果報告を行った。 「Narratives on Health, Illness, and Medication in Community-Dwelling Individuals with Schizophrenia」についてポスター発表を行った。地域で生活する統合失調症者(n=6)の健康・病気、治療薬等に関する語りから、【薬がイヤになる瞬間がある】【適量の薬で良い調子を保つ】というストーリーラインが見出されたことを報告した。面接により「薬を飲まない」選択を考える統合失調症者の主観的体験を知り得る可能性が示唆された。 本年度は、感染予防に配慮した上で、協力者との対面の可能性を模索しながら、協力者となり得る職能団体への依頼準備に取り掛かった。当初、統合失調症者を支援する専門職者は、医療専門職である看護師に限定していた。しかし、地域生活支援は医療福祉の専門職者が行うのが現状であり、医療に限定しないことで豊かなデータを得ることができる。そのため、看護師の他に精神保健福祉士を追加して、統合失調症者の地域生活を支援する専門職者の職能団体の理事会に、面接協力を打診した。就労がきっかけで統合失調症者が体調管理に取り組んだエピソードを教えていただき、福祉の専門職者との面接の可能性がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度以来、COVID19感染拡大防止のため、対面でのインタビュー調査を実施できなかった。また、2021年度は研究者が所属機関を異動、新たな研究協力先を開拓する必要があった。COVID19感染拡大防止に関する政府方針が変化する状況下、将来的に直接対面が可能になると判断し、現任の所属機関を足掛かりに、協力を依頼できる精神科看護師や社会復帰施設との関係を構築に努め、本年度は準備期間とした。 対面を避けるインタビュー方法として、Web会議用アプリを用いたオンライン面接を検討した。しかし、通信環境の整備は個人差が予想される。面接中のトラブル発生が気になって語りに集中できなかったり、面接が中断したため面接回数が増えたりするなど、協力者に負担をかけるおそれがある。 そのため、外部の研究協力者と直接接触しない、研究テーマに関連する文献検討を継続した。専門職者が執筆した薬物治療に関する一般書籍も、対象資料に含めた。統合失調症者も入手可能な書籍であれば、統合失調症者の心理や行動に対して十分に配慮した説明がされていると考えたからである。そして、面接ガイドを作成する際の、援助者側の視点を把握する手立てとした。 今年度は、2023年COVID19の感染症法上の位置づけの変更後、研究協力のリクルートに取り掛かる前提で準備を行った。また、協力対象者の範囲を、統合失調症者らを支援する専門職者にも広げた。統合失調症者本人が気づかない言動を、周囲の人から得るためである。地域生活支援は精神医療福祉の専門職者が関わっているため、看護師と精神保健福祉士を対象の職種とした。このように研究方針を変更した研究計画書を、研究者の所属機関の倫理審査委員会に提出、承認を得た。協力者となり得る職能団体に面接依頼の打診を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
一般書籍を含めた資料をもとに、研究テーマにそった文献検討を継続する。その際、治療継続の鍵は、専門職者の相互作用に基づく合意形成と仮定し、資料の記述を両者の立場で整理する。その結果を基に面接ガイドを洗練させる。 統合失調症者の地域生活を支援する専門職者から、COVID19以来の現状も含め、薬物治療に関するケアについて面接で話していただく。専門職者への面接への協力と同時に、地域生活を送る統合失調症者の紹介を相談する。精神医療福祉に関係する専門職種として、看護師と精神保健福祉士を対象とする。専門職者の背景として、統合失調症者が生活する場でケアをする職場に所属する方を条件と考えている。職場の例として、社会復帰施設や訪問看護ステーションを念頭に置いているが、所属を病院などに広げるなど、専門職者のリクルート条件を変更することもあり得る。様々な場での多職種のケアを把握することは、地域生活包括ケアのシステム構築をめざす施策と合致するものと考える。 資料および専門職者からの知見が得られた時点で、「薬を飲まない」選択に関する統合失調症者への面接を開始する。 面接調査に先立ち、精神障害者による研究アドバイスを受けることが有意義であると考える。研究協力者とは別に、研究へのアドバイザーとしてのトレーニングを受けている精神障害者への協力を得られるよう、関係者に打診する。精神障害者であるアドバイザーの協力が得られたかった場合、精神看護の経験者からの助言をもとに、面接ガイドおよび面接手法を洗練させていく。 面接で得られたデータは、協力してくださった専門職者らになじみのある、精神障害リハビリテーションに関する発表がされている雑誌や学術集会での公表をめざす。
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Causes of Carryover |
2020年度以来、COVID19感染拡大防止のため、対面でのインタビュー調査を実施できなかった。そのため、研究費の繰り越しが生じた。 2023年5月より、COVID19の感染症法上の位置づけが変更される。それにより次年度は、インタビュー調査のための移動、協力者への謝礼、データ整理、発表など、研究費を使用する見込みがある。
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