2021 Fiscal Year Research-status Report
「復興五輪」をめぐる中央―地方関係:復興「ありがとう」ホストタウン事業に着目して
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20K19548
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Research Institution | Tokyo Women's College of Physical Education |
Principal Investigator |
笹生 心太 東京女子体育大学, 体育学部, 准教授 (30593701)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 復興五輪 / ホストタウン / 災害パターナリズム / オリンピック |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は「復興五輪」の現場にてフィールドワークを行った。また従前どおりの復興ありがとうホストタウンに関する調査も2回実施する予定であったが、1回は直前の地震の影響によって中止となってしまった。 前年度および今年度の調査結果は、「「復興五輪」をめぐるポリティクス:災害パターナリズムに抗する被災地」(『大原社会問題研究所雑誌』755・756)というタイトルの論文として公表された。ここでもっとも強く主張したことは、「復興五輪」とは中央と被災地の間の権力関係が強く顕在化する場だということである。また「復興」を論じる上では、中央の目線ではなく被災地の目線に立って各事業を評価していくべきことを強く訴えた。 以上の成果物に加え、2021年度は東京オリパラの本番であったことから、いくつかのメディアから本研究テーマに関する取材を受けた。加えて、一般誌においても「「平和な社会の推進」とホストタウン交流」(『都市問題』第112巻第10号)、‘What Tokyo 2020 Was Really For: Host Town Exchanges and “Promoting a Peaceful Society”'(Japan Foreign Policy Forum, “Discuss Japan” No.68, Secondary publication)といった形で、本研究の成果を社会に還元することができた。 本研究開始時には、これほどまでに一般の関心を喚起することは想定していなかった。しかし、図らずも新型コロナの流行によって東京オリパラを開催することの正当性が疑問に付される中で、そもそも「復興五輪」というキーワードを掲げて大会を招致したことが正しかったのかという社会全体の反省のようなものが顕在化した結果と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、「復興五輪」が実施されている現場でフィールドワークを行うことができ、また調査も(当初の予定より少なかったものの)順調に実施できた。 また、中間的な成果ではあるものの、研究成果を学術論文および一般誌への論文として発信できたことは、重要な成果であった。 加えて、研究費を用いて「復興」関連の図書を蒐集することができた。これらの内容を踏まえ、今後の研究のまとめに活用していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目となる今年度は、これまでの調査結果をまとめる必要がある。現在、ある出版社から「復興五輪」全般に関する単著の出版の依頼が来ていることから、この機会を前向きに活用したいと考えている。 また、これとは別に、本研究成果を踏まえたうえで、他の研究者たちとホストタウンに関する編著を構想している。こちらにも復興ありがとうホストタウンの事例を寄せることで、本研究の成果を世に広く問うていきたい。 なお、こうしたまとめ以前に、夏ごろまでを目安にもう2件の調査を予定している。
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Causes of Carryover |
本研究では対面の聞き取り調査が重要となるが、新型コロナの流行の状況に左右されて思うように調査を実施できなかった。またアポイントを取ったものの、直前に大きな地震が発生したために延期となってしまった調査もあった。 今年度は延期になった調査を実施するとともに、当初の予定通り学会発表等で成果をまとめていく。
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