2022 Fiscal Year Annual Research Report
「復興五輪」をめぐる中央―地方関係:復興「ありがとう」ホストタウン事業に着目して
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20K19548
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Research Institution | Tokyo Women's College of Physical Education |
Principal Investigator |
笹生 心太 東京女子体育大学, 体育学部, 准教授 (30593701)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 復興五輪 / ホストタウン / 災害パターナリズム / オリンピック / 部局間連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会の開催を勝ち取るために重要な役割を果たした「復興五輪」という理念を具現化した事業である「復興ありがとうホストタウン」事業を分析した。特に、各自治体は同事業を通じていかに「復興」を成し遂げようとしているか、そしてその過程にいかなる葛藤があるのかを明らかにしようとした。 3年間の研究で、16の自治体(一般のホストタウン参加自治体を含む)および内閣官房オリパラ事務局に調査を実施することができた。結果、震災の被害状況は自治体によってまちまちであり、その結果、現在直面している地域課題もまちまちであること、そのため同事業を通じて目指される「復興」のあり方も多様であることが明らかとなった。例えば被害が甚大だった自治体では新たな産業振興の一環として同事業が利用されていたが、被害が比較的軽微だった自治体では住民の震災の記憶の継承のために同事業が用いられるといった諸相が見られた。 また、多くの自治体に共通して言えたのは、「オリパラ」という名目が据えられることで自治体内の多くの部局が巻き込まれていったということである。すなわち、同事業から得ようとする成果は各自治体によってまちまちであったことから、同事業の担当部局は、例えば福祉関連部局や教育関連部局といった、同事業の直接的な目的とは異なる部局に応援を求める必要があった。その際に「オリパラ」という名目があることで、他部局から応援を受けやすいという様子が見られた。 以上の研究全体の成果の中で、最終年度に主に実施した研究は、被災地以外の自治体によるホストタウン参加の状況を調べることであった。この調査により、より広くホストタウンという事業全体の特徴を掴むことができたと同時に、復興ありがとうホストタウンという事業の特殊性やそこに参加する自治体の抱える問題等をより浮き彫りにすることができた。
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