2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of an educational approach to prevent unintended intake of doping prohibited substances
Project/Area Number |
20K19577
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
室伏 由佳 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 先任准教授 (60740529)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | アンチ・ドーピング規程 / アンチ・ドーピング / ドーピング / アンチ・ドーピング教育 / 禁止物質 / 意図しないドーピング違反 / サプリメント |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究では、1)日本の大学生アスリートの主観的アンチ・ドーピング知識と客観的知識の関連、2)スポーツサプリメント使用の必要性の評価とスポーツサプリメント信念の媒介的役割を探求し、その成果を国際ジャーナルに投稿し掲載された。その他にも新たな調査研究を進めた。具体的な進捗として、大学生アスリートを対象に、サプリメントのドーピングリスクに関する教育と効果検証を行った。背景として、サプリメントは禁止物質のクロスコンタミネーションが重大な問題である。また、本研究及び国際研究において、サプリメント使用者はパフォーマンス向上効果への期待と信念が強いことが明らかにされている。信念が高いことで、より効果的なサプリメントを求め、禁止物質を含む製品を摂取するリスクが危惧されている。また、ゲートウェイ理論の観点から、サプリメントに対する信念が強いことでドーピングに進展する事実も国際研究で判明しているが、アスリートはこれらの知識や危機感が乏しい状況にある。 そこで本研究は、意図しないドーピング予防を目的に、サプリメント使用に伴うドーピングのリスクや禁止物質・方法、制裁等を踏まえた教育コンテンツを作成した。情報提供中心の教育を行い、教育前後と1か月後の3時点における介入効果の検証を行った。362名の大学生アスリートをランダムにオンライン講義とeラーニングの教育方法に割り当て、アンチ・ドーピング知識、サプリメントに対する信念、禁止物質確認行動(サプリメント摂取者)の変化パターンを評価した。教育手法間に有意差は見られず、知識の向上はサプリメント使用者に限り交互作用が認められたがその持続は限定的であった。また、サプリメントに対する信念の低減や確認行動の促進効果は認められず、情報伝達中心の教育の限界が示された。得られた知見は国内学会で発表した。更に英文論文としてまとめ、学術雑誌への投稿を試みる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画は、研究1においてアスリートが薬やサプリメントを使用する際に禁止物質の含有を確認する行動状況とアンチ・ドーピングに対する学習意欲の実態を解明することを目的として調査を進めた。研究2では、大学生アスリートの禁止物質確認行動の促進及び阻害要因を解明した。過年度におけるこれらの実態や背景を把握した上で、今年度の研究計画を進展させ実施できた。具体的には、意図しない禁止物質摂取を防ぐ教育的アプローチの開発に向けた教育コンテンツを作成し、情報提供中心の教育を試行し、その効果を検証した。結果として、情報提供中心の教育の効果が限定的であることが明らかとなった。さらに、未公開の研究として、サプリメント由来の意図しない禁止物質摂取とそれによる規則違反に陥るリスクの認識に焦点を当てた。この研究において、ドーピングに対する心理的背景を把握するため、日本語版ドーピングに関する道徳的離脱尺度を作成し、アスリートの道徳的離脱がサプリメントによる規則違反の認識にどのように影響を与えるかを調査し完了した。これらの進捗により、研究計画は順調に進展していると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の4年目において、大学生アスリートがサプリメント使用時におけるリスク認識、信念、禁止物質の確認行動に関する教育効果が限定的であることが確認された。これを基に、次年度の研究計画では、新たな視点で研究を行っていく。主には、ドーピングに対する道徳的離脱という心理的特性に焦点を当て、教育的アプローチの開発検討に役立てる予定である。ドーピングに対する道徳的離脱とは、自己の行動を外的要因や他者の責任に帰属させることで、内面の道徳基準と矛盾する行為を正当化し、罪悪感や羞恥心を抱くことなく禁止された行為を許容する心理的メカニズムである。これらの心理的特性が、アスリートの道徳的離脱プロセスやドーピング行為への抵抗、またはそれを促進するかの理解は教育的アプローチの検討には極めて重要である。また、アスリートが意図せず禁止物質を摂取するリスクを最小限に抑えるための要因や条件を特定し、それに基づく予防策の検討に役立てる。これらの研究成果は、国内外の学術集会での発表及び、学術誌への投稿を通じて広く公表される予定である。
|
Causes of Carryover |
年度使用額が生じた理由は、予定していた国際学会への渡航が中止になったためである。また、次年度はこの余剰資金を使用して研究プロジェクトの範囲を拡大し、さらに研究成果の公表(論文発表)にも一部資金を充てる予定である。
|
Research Products
(9 results)