2021 Fiscal Year Research-status Report
運動実行に対する教示方法の違いが脳内情報処理過程及び運動出力に与える影響
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20K19607
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Research Institution | Seiwa University |
Principal Investigator |
酒本 夏輝 清和大学, 法学部, 講師 (10824063)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 不安 / 口頭教示 / 知覚運動パフォーマンス / 注意バイアス |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景・目的】高状態不安時に,不適切な声かけが運動の失敗を誘導してしまう可能性がある.しかしながら,口頭教示と運動成功・失敗との関係性および不適切な教示が運動エラーを誘導する現象の認知メカニズムは,これまで明らかにされていない.本研究では,注意バイアスに着目して,不安時に運動エラーを誘導する教示の背景にある認知メカニズムの解明を目指す. 【方法】Dot prove taskとバーチャルシューティング課題を組み合わせたパフォーマンステストを開発した.実験1では,「味方のいる側」を標的空間とし,実験参加者にその空間にできるだけ素早くパスすることを要求した.実験2では,「敵がいない側」を標的空間とし,その空間にできるだけ素早くシュートすることを要求した.注意バイアスは,標的提示に先行する手がかり(顔写真)の脅威性により操作した.状態不安は,電気ショック法により操作した.知覚運動パフォーマンスは,標的提示からパスあるいはシュート方向決定反応(ボタン押し)までの時間で評価した. 【結果および考察】怒った顔写真と標的の提示空間が一致するとき,反応時間は有意に小さかった:実験1.怒った顔写真と妨害者の提示空間が一致するとき,標的に対する反応時間は有意に大きかった:実験2.高状態不安が脅威関連刺激に対する無意識の注意バイアスを引き起こし,知覚運動パフォーマンスを低下させることを確認できた. 【今後の予定】高状態不安時に不適切な教示が運動エラーを生じさせるとき,運動エラー誘導要因として注意バイアスが介在することを実証する.すなわち,不適切な教示には,状態不安により誘導される注意バイアスを強化する効果があることを確かめる.この目的のために,新たにバーチャルフライングディスク課題を開発する.脅威性手がかりを用いて無意識の注意バイアスを操作し,教示有無条件間で運動エラーへの誘導効果を比較する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度から始まった本研究課題は,2020年度は先行研究レビューを元とした予備実験の実施,2021年度は実際に実験課題を設定し,本実験をスタートさせた.実験結果の統計解析も完了し,現在は執筆活動並びに続いての研究課題に向けて実験プロトコルの設定を行っている. これまでのところ,実験結果は概ね仮説通りの結果が示されたため,今後の実験課題については,先行研究では着手されていなかった点について,詳細に検討できる内容で進めていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験により,高状態不安時には脅威関連刺激に対して注意の偏り(注意バイアス)が生じ,その結果,選択反応時間が遅延されることが示された.これは先行研究の結果を支持するものであった. 今後は,これまでの実験課題の内容を発展させた上で,口頭教示を与える.口頭教示の有無や内容の差異によっては,注意バイアスが強化されることが想定され,それにより選択反応時間が影響を受けると考えられる. さらに,同実験課題時において脳波測定を行うことで,脳内の認知メカニズムを明らかにする予定である.高状態不安時に,負の口頭教示を受けると注意バイアスが強化され,注意処理資源が運動パフォーマンス以外に多く偏ることが想定される.脳波測定の結果は,この結果を表すものと予想される. 以上のことが明らかとなれば,運動実施者に対する口頭教示の良し悪しが注意および運動パフォーマンスに与える効果の背景にある認知メカニズムを解明できるものであると考えている.
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Causes of Carryover |
2021年度における計画段階で参加の見込まれていた国際学会大会が、新型コロナウィルス感染拡大の影響により不参加となり、旅費への支出が予定よりも減少したため。 2022年度においては、学会参加や論文執筆における英文校正,新たな実験課題遂行(運動課題や脳波測定)等に繰越金を使用する予定である。
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