2020 Fiscal Year Research-status Report
青少年のウェルビーイングを促進する「立腰」姿勢教育に関する縦断的研究
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20K19729
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Research Institution | Momoyama Gakuin University of Education |
Principal Investigator |
村上 祐介 桃山学院教育大学, 人間教育学部, 准教授 (10780190)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 身体教育 / イス / 人生の意味 / エンゲージメント / 学習環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
・具体的内容 2020年度は介入研究を1件実施した。研究の目的は,良い姿勢を補助する「立身」イスによる介入を行い,高校生の姿勢保持,授業への集中度,精神的健康への影響を明らかにすることであった。関西府下の私立高等学校2年生Xクラスに所属する27名(女子15名,男子12名)を対象に,参加者内要因のA-B-Aデザインで研究を実施した。 一元配置分散分析の結果,(1)介入期はプレ期やポスト期に比べて精神的健康(SWHO5J)得点が高く,(2)人生の意味感得点も,プレ期に比べ介入期の方が高いことが明らかになった。また,立身イスの介入が,姿勢保持を介して集中度あるいは日常の人生の意味(DMS)に及ぼす影響を検討するため,2水準参加者内計画の媒介分析を行なった。従属変数が集中度のモデル,DMSのモデルそれぞれにおいて,間接効果が確認された。すなわち,立身イスの使用は,プレ期に比べ介入期の生徒の姿勢を改善し,姿勢が改善するほど授業への集中度や人生の意味を高めていた。 サンプリング対象を変えた追試や,より長期の介入効果の検討が今後の課題として挙げられた。 ・意義・重要性 青少年のウェルビーイングを高める方途が模索される現況において,例えば心理的ウェルビーイングの中核である「人生の意味」の介入においては,人生の意味を熟考する,といった認知的なアプローチが主流だった。しかし,こうした認知的アプローチには,参加者の精神的負荷を高めるという限界も指摘されており(村上, 2013),本研究は,従来は着目されることのなかった,姿勢への介入という「身体性を基盤とするアプローチ」の有効性を実証するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は,新型コロナウィルス感染症の感染拡大が生じ,研究フィールドとして想定していた大学,高校等の教育現場が臨時休校措置や遠隔授業への切り替え対応に追われていた。そのため,学習者の参加を前提とする本課題について,実験実施の可否が不透明な時期が続いた。こうした現状を踏まえ,当初予定していた,大学生を対象とする基礎研究の実施は断念し,実施の見通しが立った研究協力校(高校)において,1クラスを対象に応用(介入)研究を行うことができた。当該研究の結果は,概ね仮説の方向性を支持するものであり,研究遂行・導出された知見のいずれにおいても,順調に進展しているものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では,応用研究を2つ実施する予定であり(2020年度に1件実施済),2021年度には,中学生を対象とした研究を行う算段で準備を進めている。既に研究実施校との具体的な協議を進めており,新型コロナウィルスの感染拡大状況に応じて,実施規模や日時を調整しながら研究遂行に辿り着きたい。 なお,2020年度に実施した高校生対象の応用研究の成果を,2021年度中に学会発表ならびに論文投稿する予定で準備を進めている。
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Causes of Carryover |
当初予定していた基礎研究を,新型コロナウィルス感染拡大を理由に断念し,その代わりに,応用研究1を前倒しで実施した。そのため,基礎研究実施にあたり実験補助者に支払う予定だった人件費の支出が抑えられた。当該助成金については,2021年度に実施する応用研究2等において使用する予定である。
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