2021 Fiscal Year Research-status Report
青少年のウェルビーイングを促進する「立腰」姿勢教育に関する縦断的研究
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20K19729
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
村上 祐介 関西大学, 文学部, 准教授 (10780190)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 身体教育 / イス / ウェルビーイング |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は介入研究を1件実施した。研究の目的は,良い姿勢を補助する「立身」イスによる介入を行い,中学生の身体的姿勢,授業への集中,精神的健康等への影響を明らかにすることであった。公立中学校2年生を対象に,参加者内要因のA-B-B-Aデザインで研究を実施した。参加者は,1学期を教室備え付けの通常イス(プレ期)で,2学期を立身イス(介入期; 10月末,12月末の2度にわたり効果測定実施)で,3学期を再び通常イス(ポスト期)で過ごした。立身イスは,姿勢をサポートしやすくしたクッション(岡政椅子製作所)を通常イスに装着したものを使用した。 各尺度の得点を従属変数に,時期要因(4水準:プレ・介入1・介入2・ポスト),学級要因(2水準:1組・2組),性別要因(2水準:男子・女子)を独立変数とした三要因分散分析を実施した。その結果,積極的授業参加行動尺度短縮版(安藤・小平・布施, 2018)の「注視・傾聴」のうち,「授業中によいしせいですわる」の得点において,時期の主効果が有意であった。多重比較の結果,プレ期に比べて介入期1,ポスト期の得点がそれぞれ高かった。また,小学校高学年児童および中学生版自己像の不安定性尺度(原田・中井・黒川, 2021)の「ニュートラルな揺れ」の得点において,時期と学級の交互作用が有意であった。単純主効果検定の結果,A学級において,介入期1に比べてポスト期の得点が高かった。 先行研究において,背筋を伸ばした姿勢は,情動・気分,認知,学習意欲,自己概念等に肯定的な影響を及ぼすことが明らかになっている。1学期間の介入により,生徒の姿勢が改善するとともに,ストレス反応と正の関連を示す自己イメージの揺れが,部分的に抑制する可能性が示唆された。学習環境の調整という姿勢改善のアプローチの一方略について,有益な知見を蓄積することができた点に,本研究の意義が認められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請課題では,当初より,2件の応用(介入)研究を実施する予定であった。2020年度に実施が終了した1件の研究は,査読付き学術雑誌に投稿し,査読中である。また,2021年度には,2件目の応用研究を実施することができ,現在,研究成果の発表に向け準備を行っている段階である。このことから,当初の最低限の目標である介入研究の実施はクリアできており,成果発表にやや遅れは見られるものの,おおむね順調に進展しているものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度(高校),2021年度(中学校)に実施した介入では,群間比較(統制群,介入群)による研究を実施することができず,介入効果を強く主張することができなかった。2022年度は,これらの課題を踏まえ,研究デザインを改善した介入研究を実施する方向で,実施協力校と協議を進めている。 この他,2021年度に実施した中学生対象の介入研究の成果を,2022年度中に学会発表ならびに論文投稿する予定で準備を進めている。
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Causes of Carryover |
当初,効果測定の一環として生理指標を使用する予定だったものの,研究実施校との打ち合わせにより,最終的には導入を見送ることとなった。そのため,次年度の研究では,次年度分助成金と合わせて購入可能な指標の使用を検討している。
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