2020 Fiscal Year Research-status Report
多層ネットワークを用いたワクチン忌避に対する実証的研究
Project/Area Number |
20K19928
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐野 幸恵 筑波大学, システム情報系, 助教 (60580206)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ソーシャルメディア / ワクチン忌避 / データ分析 / シミュレーション / Twitter |
Outline of Annual Research Achievements |
科学的には安全性が立証された、入手可能なワクチン接種を拒否したり躊躇したりする行動は「ワクチン忌避」と呼ばれる。ワクチン忌避によって公衆衛生上の問題が生じることに対し、2019年WHOは気候変動などと並び世界の健康に対する脅威の1つとして警鐘を鳴らした。ワクチン忌避は日本を含む先進国で深刻な問題となっており、特にSNS上で多くの情報がやり取りされている。本研究では、ワクチン忌避に対して、日本のSNSで実際にやり取りされているデータを収集・分析し、実証的な視点からその解決策を探る。ワクチン接種に関しては、同一人物でも、インフルエンザワクチンは積極的に接種するが、HPVワクチン接種は躊躇うといった複雑な態度をとることが知られている。この個人のワクチンに対する態度の不均質性を鍵として、情報を多層に積み上げ、実データとネットワークシミュレーションを組み合わせて解決の糸口を探る。 本研究の初段階として、日本で広く使われているTwitterからワクチン忌避に関連する必要なキーワードを指定、データを取得する必要がある。2020年にはTwitter社が学術利用向けにAcademic APIを公開した。Academic APIは従来の無料APIが過去1週間しかアクセスできなかったものが、取得上限はあるものの無料でフルアーカイブへアクセス可能となるものである。このAcademic APIを利用申請し承認されたため、データの取得精度向上が期待できる。 ただし2020年度は、新型コロナウィルスの影響で、「ワクチン」自体に関する関心が非常に高まった。また、病院そのものへ行くことを躊躇うといった別の要因によるワクチン接種率の低下も指摘された。研究計画当初と社会背景が大きく変わる中、公衆衛生が専門の研究協力者と定期的にミーティングを重ね、どういったキーワードでデータ取得するべきなのかを慎重に議論を重ねている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ワクチン忌避に関するデータの取得は、当初予期しなかった事情(新型コロナウィルスによるワクチンへの関心の高まり等)により遅れぎみである。一方で、新型コロナウィルスに関するSNS、特にブログ上での人々の反応に関して分析を進め、その内容を国内外で講演を行った。(国際招待講演1件、国内招待講演1件、学会発表1件) また、単層のネットワークシミュレーションに関しても分析を進め、物理学会で発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で重要な役割を果たすSNSデータの取得目処が立ったことから、今後は効率的にデータを収集し、分析を行っていく。特に単層におけるネットワークシミュレーションのコードは完成し、拡張も容易にできる。データ駆動型でワクチン忌避特有の情報拡散形態を見出し、その知見をシミュレーションに取り入れていく。そして、国際会議や学会などの発表だけではなく、得られた分析結果を学術雑誌に投稿することを目指す。
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Research Products
(4 results)