2021 Fiscal Year Research-status Report
多層ネットワークを用いたワクチン忌避に対する実証的研究
Project/Area Number |
20K19928
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐野 幸恵 筑波大学, システム情報系, 助教 (60580206)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ソーシャルメディア / SNS分析 / ネットワーク分析 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
ワクチン忌避に対する解決の糸口を探るため、本研究ではSNSでやりとりされるワクチンに関する情報についてその実態を把握し、計算機シミュレーションを行う。昨年度は、SNSの中でも日本で広く使われているTwitterを用いてデータを収集する目処をつけることができ、本年度より本格的なデータ収集を開始した。 データの収集を開始したところ、当初の予定では「ワクチン」という単語を含むツイートを網羅的に収集する予定であったが、2020年以降の新型コロナウィルスのワクチンに対する関心の高まりの影響を受け、予定を変更せざるを得ない状況となった。例えば新型コロナウィルスに関するニュースがほぼなかった2020年1月には、月に50万件程度の書き込みだったものが、翌2021年1月には、月に370万件とほぼ7倍近くに増加し、2021年8月のピーク時には月に1830万件と予想を超える量が投稿されているためである。 そこで、SNSの分析に関しては、まずはワクチンで予防できる病気の一つである「風疹」に関するツイートのみを網羅的に集め、詳細に分析し、どういった場合に関心の高まりがあったのか、どういったアカウント(ツイートの作者)が投稿しているのかを明らかにし、日本公衆衛生学会総会にて報告を行った。 シミュレーションに関しては、ワクチンとは異なるが、同等の大規模なツイートデータと組み合わせた計算環境を確立した。このシミュレーションを実行し、さまざまな仮想シナリオで実験した結果、影響力のあるアカウントを直接引用して情報を広める方が、間接的な方法よりもほり影響力が大きいことを示すことができた。この内容についての論文は、査読を経て2021年6月に公開された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
風疹に関するSNSデータの入手や分析が比較的スムーズにできた一方で、より広範囲なワクチンに関するデータ収集が難航している。例えば2019年と2020年のみなど部分的にデータは入手できてはいるものの、まだ科学的な議論ができる程度の質・量が確保できていない。 またシミュレーションに関しては、SNSデータを取り込んだ単層シミュレーションに関しては、学術雑誌へ投稿し、公開までされたものの、目標とする多層シミュレーションに拡張する作業が滞っている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは2021年度に行った、風疹に関する研究発表の内容を、日本公衆衛生学会の学会誌へ投稿するべく論文執筆を確実に行う。 SNS分析に関しては、データが膨大になってきたことから、今後は共同研究者や研究補助者などと協力しながら、データの整理とその内容についての精査を行う予定である。 シミュレーションに関しては、SNSとは異なるが学術ネットワーク分析で多層ネットワークを扱っている共同研究者らに協力を仰ぐことで、多層ネットワークシミュレーションの構築を目指す。
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Research Products
(5 results)