2022 Fiscal Year Annual Research Report
北極圏海氷域における微量金属元素「マンガン」の役割
Project/Area Number |
20K19949
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
漢那 直也 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (90849720)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 微量金属 / 海氷 / 北極海 / マンガン |
Outline of Annual Research Achievements |
北極圏海氷域における微量金属元素「マンガン(Mn)」の役割を明らかにするために、2022年度は主に以下の取組みを行った。 1.北極海における海氷および海水中のMnの定量分析を行った。 2.極北カナダの現場観測が実現し、Mn分析用の海氷および海水試料を採取することに成功した。 3.新規製作したMn分析計の感度向上を目的とした検討を行った。 1について、2021年度にラプテフ海と東シベリア海で採取した海氷および海水中のMnを、高分解能誘導結合プラズマ質量分析計(HR-ICP-MS)で分析した。当該海域に流入する淡水の起源について、(A)海氷融解水と(B)その他の淡水(河川水、降水など)に分類し、Mnとの関係を調べたところ、表層水中のMn濃度は(B)の起源と有意な正の相関を示した。当該海域にはレナ川、コリマ川が流入しており、河川からのMn供給が、北極海表層のMn濃度に影響を与えていることがわかった。一方、海氷中の溶存態Mn濃度(約5 nM)は海水(約28 nM)よりも低く、海氷の融解は北極海表層のMn濃度を薄める効果をもたらすことが考えられた。2について、カナダ・ケンブリッジベイで行われた国際海氷相互比較研究観測に参加した。海氷域において、海氷および海氷下の海水を採取し、Mn分析用の試料として日本へ持ち帰った。現在試料の分析、解析を進めている。3について、2021年に引き続き、ルミノール化学発光法を用いたMn分析法の検討を行った。分析計の感度向上が主な検討事項であったが、試薬の保存方法や試薬と海水試料の混合方法を改良することで、分析感度が向上した。本分析法を用いて、濃度レベルが低い外洋水(0.5 nM以下)に対しても、Mnを定量的に評価することが可能になった。
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Research Products
(13 results)