2017 Fiscal Year Annual Research Report
Historical and sociolinguistic study of the Manchu language
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17H06182
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久保 智之 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (30214993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
承 志 追手門学院大学, 基盤教育機構, 教授 (80455229)
児倉 徳和 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (70597757)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 満洲語 / シベ語 / 档案資料 / 表記の揺れ / 方言差 |
Outline of Annual Research Achievements |
言語学の面では、シベ語の音韻論・形態論について、台湾在住のシベ族の言語コンサルタントの協力を得て調査を進め、助詞(=ye'<具格>, =ci'<方向格>)の音韻論的特徴を確認した。また、シベ語・満洲語の方言差を明らかにするため、シベ語の方言ごとの談話データ(4時間*8地点)を採録し、書き起こしを行なった。さらに、シベ語出版物の保存と研究の便のため、電子化作業を進めた。1950年代からの出版物の1万ページ分のスキャンを完了した。 歴史学の面では、満洲語文書資料を用いて、ジューンガル遊牧政権の実態と満洲人の大地測量・絵図作成の実態を明らかにした。これらの実証研究を行なうために、満文録副奏折のローマ字転写データを作成した。 2018年1月には、台北の中央研究院・歴史語言研究所で、「満語・錫伯語(シベ語)的語言与歴史:回顧与展望」と題する国際シンポジウムが開催された。本研究課題の研究分担者3名と、研究協力者である東北師範大学の庄声副教授が論文発表を行ない、研究者・大学院生など数十名の聴衆の参加も得て、活発な学術交流を行なった。 2018年3月16日には、中国長春の東北師範大学・歴史文化学院(劉暁東院長)主催により「清代満文档案与錫伯語(シベ語)時空対話」と題するシンポジウムが同大学で開催され、研究代表者の久保が講演を行なった。同17-18日には、研究協力者である同大学の庄声副教授の協力を得て、同大学において、「満洲族錫伯族(シベ族)語言歴史文化国際研討会」を開催した(東北師範大学と九州大学の共催。九州大学のグラントも得た)。中国各地(新疆ウイグル自治区を含む)および台湾、ドイツ、日本から三十数名の研究者が論文発表を行ない、東北師範大学の教員・大学院生など数十名の聴衆の参加も得て、活発な学術交流を行なった。この国際シンポジウムの成果は、書籍として出版すべく、中日双方で準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は、中国新疆ウイグル自治区で予定していたシベ語の調査が実施できず、一部旅費を繰り越した。これは、中国新疆ウイグル自治区で言語調査を行なうための中国側の受け入れ機関を探すことが、現在非常に困難となっているためであった。幸い、1名のみで、しかも高齢ではあるが、台湾の新北市在住のシベ族の言語コンサルタントが調査に協力してくれ、シベ語の種々のデータを集めることが可能となっている。 その他の、満洲語・シベ語の文献資料の収集・研究などは、順調に推移している。論文発表、国際学会を含む学会発表なども適宜行なっている。 以上の理由により、本研究課題の研究は、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
シベ語の調査については、台湾での調査に加えて、オーストラリアの数カ所など、新疆ウイグル自治区以外の地域に住むシベ族を対象にして行なう方策も取る。また、研究分担者の承志(シベ族)が新疆ウイグル自治区に赴いて調査を行なうという方策も取る。このような方策を取ることにより、2017年度の旅費の一部繰り越し(新疆ウイグル自治区での調査が実施できなかったことによる)と同じようなことが再び起こることを、避けることができる見通しである。
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