2023 Fiscal Year Annual Research Report
満洲語の歴史社会言語学的研究ー言語学と歴史学からの解明ー
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20K20274
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久保 智之 九州大学, 人文科学研究院, 特任研究員 (30214993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
承 志 追手門学院大学, 基盤教育機構, 教授 (80455229)
児倉 徳和 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (70597757)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 満洲語 / シベ語 / 清朝における地図製作 / ジューンガル遊牧社会 / シベ語対談 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、数年ぶりに2人が、ドイツや台湾で海外調査を実施することができた。それぞれ、ベルリン国立図書所蔵の満洲語文献の調査や、台湾在住のシベ族のシベ語文法の調査を、継続することができた。 本研究課題では、これまで、音韻論も含め、広くシベ語の文法について、台湾在住のシベ族の言語コンサルタントの協力を得て調査を進めてきた。また、シベ語・満洲語の方言差を明らかにするため、シベ語の方言ごとの談話データを採録し、書き起こしを行なった。さらに、シベ語出版物の保存と研究の便のため、電子化作業を進めた。また、オーストラリアのシドニーをはじめとする数カ所を、研究分担者の3名、および研究協力者である中国・東北師範大学の庄声教授が訪問し、中国新疆ウイグル自治区から移住したシベ族数十名と対面調査を行なった。 歴史学分野では、清朝における地図製作とジューンガル遊牧社会との関係に関する論文や、石碑に刻まれた「喇嘛説」マンジュ語(満洲語)部分とマンジュ語『金史』の編纂に関する論文を執筆した。 特筆すべきは、研究分担者の承志が中心となって、2020年度5月に開始した「週日錫伯語対談」が、2024年1月末で121回となったことである。引き続き、zoom で全世界のシベ族、およびシベ研究者を繋ぎ、シベ語でオンラインの対談を実施した。分担者の承志が、対談相手の選定と対談の司会を行ない、毎回さまざまなシベ人士に登場願って行なってきた。 内容は、シベの歴史・文化に広くおよび、シベ・満洲の歴史研究者や、シベ語出版物の出版に従事した人士など、専門性の高い仕事についての対談も織り込まれていた。コロナ渦のなかで、現地調査や国際会議開催がままならない中、シベのネットワーク拡大に大きく貢献するとともに、シベ語という消滅危機言語の記録としても、大変貴重なデータを蓄積してきたと言える。
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