2017 Fiscal Year Annual Research Report
Interdisciplinary research on standardization of individual cultures between anthropology and accounting
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17H06191
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
出口 正之 国立民族学博物館, 人類基礎理論研究部, 教授 (90272799)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾上 選哉 大原大学院大学, 会計研究科, 教授 (00341199)
竹沢 尚一郎 国立民族学博物館, 名誉教授 (10183063)
藤井 秀樹 京都大学, 経済学研究科, 教授 (80173392)
宇田川 妙子 国立民族学博物館, 超域フィールド科学研究部, 教授 (90211771)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | トランスフォーマティブ・リサーチ / ビジネスセントリズム / チャリティ / IFRS / 公益法人会計基準 / 社会的インパクト / 領域設定総合化法 / ハイパーインフレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目から思った以上の業績を発表し、また、反響を得ることができた。本研究は挑戦的萌芽研究(2015-2016)の後継研究であり、決定時期が夏場で1年間の期間はなかったものの想定以上のスタートが切れた。ジンバブエのハイパー・インフレーションを研究していた人類学者と公益法人会計を研究していた会計学者に研究協力者として加わってもらった。その結果、人類学者が持ち帰っていた何気ない新聞に記載されていた「未監査」の状態の決算報告書が、ジンバブエも「国際財務会計基準」に従っているはずだという認識の会計学者の常識を打ち破る重要標本であることを「発見」することができた。従来、接点がないと思われていた両学問だけにその遭遇だけで思わぬ効果が生まれたのである。 実績も順調で英国の会計学者と研究代表者による国際共著論文1本をはじめ、重要なジャーナルに論文が掲載されたほか、歴史ある「日本会計研究学会」で、会計学者と文化人類学者からなる共著論文を発表することができた。「日本会計研究学会」で文化人類学者が発表したのは初めてのことと理解している。 また、会計学の研究分担者は、MBA(ビジネス修士号)の授業において、ジンバブエの人類学者の研究やインドネシアのトーライ人貝貨貨幣についての人類学の研究を早速授業に取り入れた。また、非営利の会計を考えるときに、マジョリティである企業を前提にする見方が人類学者からはエスノセントリズムと同様の思考形態にあることがわかり、現代社会の企業中心の見方を「企業中心主義的思考」=「ビジネスセントリズム」として捉えることとした。 トランスフォーマティブ・リサーチの1つとして、研究を実施し始めたが、グローバル化を挟んで対極にあってほとんど接点のなかった両学問が出会うことでこのような効果が出てきたことに驚いている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
萌芽的研究(開拓)という未知のプログラムであり、人類学者と会計学者による学際研究ということで、本年度は着実なスタートが切れるように、以下の4つの大きな柱を上げていた。 1.【前提の確認】両方の学問領域の研究倫理、オーサーシップなどの文化の相互理解である。この点については当然のことながら、スタートしたばかりでありもう少し時間がかかるが、当初に想定したとおりである。 2.【手法の認識】ということで、トランスフォーマティブ研究で領域設定総合化法を用いることにしていた。この点にはついては、従来、ほとんど接点がなかった両学問の研究者が思った以上に、相互刺激を受けて当初の予定を遥かに超えるスタートとなった。トランスフォーマティブ研究の効果については、遥かに大きな手ごたえがあった。 3.【理念的フィールド】空間的概念から解き放たれた「政策」などの「フィールド」を本研究では「理念的フィールド」と呼んでいる。本年度の調査は、「理念的フィールド」を中心に行い、国際財務報告基準の非営利法人への影響、贈与の会計、社会的企業の成果などに関する調査を実施した。 4.【空間的フィールド】研究計画では平成30年度に会計学者と人類学者が実際の「空間的フィールド」で研究活動を行うようにしていたので、その準備作業を着実に行った。
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Strategy for Future Research Activity |
1.【前提の確認】両方の学問領域の研究倫理、オーサーシップなどの文化の相互理解は極めて重要であり、今年度も引き続き実施する。 2.【手法の認識】初年度でほぼ終了したと認識している。 3.【理念的フィールドにおける研究】企業の会計の世界的な標準化を目指している「国際財務会計基準」が、会社法や法人税は各国バラバラなままで会計を1つに標準化しうるという前提に立っていること、会計を「言語」に比す会計学者が存在していることなどから、税制や会社法等との関係も視野に含め、「理念的フィールド」として、国際財務報告基準の非営利法人への影響、贈与の会計、社会的企業の企業と非営利のハイブリッド制なども対象に研究を進めていく。 4.【空間的フィールドにおける研究】当初の研究計画どおり、今年度は人類学者のフィールドワークの現場に会計学者も参加する「空間的フィールド」による研究を実施する(分担者のうち竹沢は長期間フランス滞在予定であり参加せず)。但し、当初は研究分担者のフィールドであるイタリアを想定していたが、同地での研究受入れ体制を整えることが困難であることが分かり、ニューヨークのミュージアムをフィールドとしている研究者を研究協力者とすることで、会計学者・人類学者による共同のフィールドワークをニューヨークで実施することとした。 5.【学会発表など】7月に開催のInternational Society for Third Sector Researchで発表予定の他、国内の学会でも発表を予定する。
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Research Products
(16 results)