2018 Fiscal Year Annual Research Report
Interdisciplinary research on standardization of individual cultures between anthropology and accounting
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17H06191
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
出口 正之 国立民族学博物館, 人類基礎理論研究部, 教授 (90272799)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾上 選哉 大原大学院大学, 会計研究科, 教授 (00341199)
竹沢 尚一郎 国立民族学博物館, その他部局等, 名誉教授 (10183063)
藤井 秀樹 京都大学, 経済学研究科, 教授 (80173392)
宇田川 妙子 国立民族学博物館, 超域フィールド科学研究部, 教授 (90211771)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | トランスフォーマティブ・リサーチ / ビジネスセントリズム / チャリティ / 公益法人会計基準 / IFRS / 公益法人 / 標準化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年の研究計画は、共同研究体制がほぼ組まれることがなかった文化人類学者と会計学者が、文化人類学者のフィールドにともに出かけることを主眼としていた。研究協力者として文化人類学者である太田心平国立民族学博物館准教授を起用し、そのフィールドである米国・ニューヨークへ、太田の他、出口、藤井、尾上の合計4人で調査を行った。アメリカ自然史博物館(米国IRC501(c)3団体)について、IRSのForm990を会計学者と面接したほかアメリカ自然史博物館の文化人類学部長、文化人類学部の職員(公認会計士資格取得者)に対する調査を行うことができた。 同人類学部長の反応は気になったところであるが、平素、出張費の精算等で事務部門と衝突することもあり、「大変面白い研究」と評価を頂いた。とりわけ、アメリカ自然史博物館では、旅費精算の電子化が検討されているが、現在ではアナログベースの出張清算であり、用紙も持ち帰ることができた。アナログの会計資料の収集も今行っておく必要性も感じた。 また、非営利セクター全体に影響を与える休眠預金活用についての研究を進展させ、アクション・アンソロポロジーとして積極的に係った。様々な非営利法人の会計基準が企業会計の影響を受けた損益計算書となっているのに対して、休眠預金活用のための指定活用団体の会計は役所のチェックが可能なことが理由と考えられるが、収支計算書となっていることなどの影響が、実際の活動を通じて明らかになった。 また、会計の問題をアプローチするための人的なネットワーク形成のため、公益法人を対象とした研究会を1回開催するなど試行錯誤を繰り返しながら研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年目は研究計画がしっかりできていたこともあって順調なスタートとなったが、2年目は「挑戦的研究(開拓)」の難しさに直面した。 海外出張の訪問先には研究分担者のフィールドを考えていたところ、分担者(一人は海外の大学に長期招かれたため)の日程上の都合からそれが適わずに、別途、研究協力者に就任を依頼し、研究協力者のフィールド先を訪問することとなった。また、折衝した訪問先のいくつかには断られるなど事前準備は大変難航した。 事前準備が難航した理由の一つは、「会計」という研究対象の特殊性にあると考えている。研究倫理上のこともあり、訪問先には、研究の目的を提示しているが、「会計」という話題には非常に強い抵抗感が存在することが分かった。特に非営利組織ならば、法令上公表しなければならない会計データもあるため、それ以上のことを外部に対して話をする必要性もないことによる。今後とも方法論上の試行錯誤が続くものと予想するが、これはトランスフォーマティブ研究であれば、当然踏むべき段階であり、むしろこういう困難が明らかになったことこそ、今後の研究に良い影響を与えるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
実験的に行った公益法人の研究会は、公益法人関係者から協力を得られ、極めて有効であることが判明した。そこで、日本の非営利組織の会計の実態を探るために、公益法人を対象とした研究会を継続的に実施しながら、研究に協力いただける非営利組織を増やしていくことで、「会計」についてより深い資料やデータを集めていくことに挑戦していきたい。特に内閣府公益認定等委員会の会計研究会がIFRSの影響を受けた日本の企業会計の改正をそのまま公益法人にも適用しているため、公益法人の実務上の課題は本研究テーマにふさわしい事例を提供してくれている。今後この部分に力を入れていきたい。 また、本研究は文化人類学者と会計学者の共同研究ということで外部からの関心も高く、特に会計学史研究者からの照会も多い。歴史的な視点については当初考慮していなかったが、各文化グループが使用している会計システムを「言語」として捉えれば、本研究プロジェクトは様々な言語を有する集団が「言語を統一するプロセス」を研究することでもある。各商家が独自に有していた会計システムが、近代化とともに「普遍的」な会計システムとしての企業会計に代わっていった歴史的視点も入れていくことは意味があるように思う。あまり、間口を広げすぎないようにしつつ、この視点も取り入れていきたい。
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Research Products
(12 results)