2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H05319
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
矢守 克也 京都大学, 防災研究所, 教授 (80231679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹之内 健介 京都大学, 防災研究所, 特定准教授 (00802604)
稲場 圭信 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (30362750)
八木 絵香 大阪大学, COデザインセンター, 教授 (30420425)
加納 靖之 東京大学, 地震研究所, 准教授 (30447940)
飯尾 能久 京都大学, 防災研究所, 教授 (50159547)
本間 基寛 一般財団法人日本気象協会, 専任主任技師 (80643212)
磯部 洋明 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 准教授 (90511254)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2024-03-31
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Keywords | オープンサイエンス / サイエンスコミュニケーション / 科学教育 / アクションリサーチ / 防災 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「オープンサイエンス」の立場に立って、天変地異(防災・減災)に関する研究・教育のあり方を変革することを目的とした研究である。「オープンサイエンス」とは、科学研究をより開かれた活動へと変革する運動である。狭義には、より多くの人々が科学研究のデータや成果にアクセス可能とすること、広義には、従来のサイエンス・コミュニケーションを拡張して、市民を含めより多くの人々が協力し、人々から信頼される科学研究を実現するための科学論・教育論を構築することを目標とする。 本年度は、昨年度に引き続いて、天変地異に関する研究を「認識」レベルで「オープンサイエンス」化するための研究を、「観測」と「解読」の2つの側面から実施した。 「観測」では、内陸地震に関する最先端の観測研究に地域住民が関与する研究、および、「ゲリラ豪雨」など局所的な気象現象の解明に一般住民から寄せられる情報を活用した研究や教育を実施した。具体的には、阿武山地震観測所における地震サイエンスミュージアム計画の一環として、鳥取県西部地震(2000年)や大阪府北部地震(2018年)の余震観測活動に市民参画型のフレームワークを導入することを目的としたアクションリサーチを実施した。また、兵庫県宝塚市、三重県伊勢市で、豪雨災害からの避難のトリガーとなるるローカルなリスク情報を市民参画型で観測・共有するためのシステムづくりを推進した。 「解読」では、古文書の解読を通して地震、台風といった事象に関する歴史的な解明を図る研究を実施した。具体的には、古文書から古地震記録を抽出する試みとして定評のある「みんなで翻刻」システムのリニューアルを実施し、市民参加型で歴史災害情報を構築するための仕組み作りについて検討した。 なお、これらのアクションリサーチの意義と課題を、サイエンス・コミュニケーション、アウトリーチ論の観点から考察する作業も実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「天変地異のオープンサイエンス」運動の基本の2柱として位置づけた「観測」と「解読」のうち、「観測」については、まず、阿武山地震観測所のサイエンスミュージアムプロジェクトはきわめて順調に推移し、市民参画の程度を示す指標群(来訪者数、市民ボランティアの述べ活動数、イベント開催数など)も、プロジェクト開始直後の数倍以上にも上っている。市民参画型の地震観測活動と波形データの読み取りプロジェクトは順調に進捗し、全体として、研究はおおむね順調に進んでいる。 また、豪雨災害に関する避難トリガー情報を、住民参画型で運用するプロジェクトも、兵庫県宝塚市、三重県伊勢市などで順調に推進している。これらの成果は、「避難スイッチ」、「セカンドベスト」といった用語とともに全国各地に水平展開され、この点も大きな成果を上げている。 さらに、「解読」でも研究は順調に進捗している。古文書から古地震記録を抽出する試みとして定評のある「みんなで翻刻」プロジェクトについては、登録者数、翻刻された文字数とも順調に増え、人文系分野と理工系分野の融合分野におけるオープンサイエンス運動のモデルケースにまで育ってきている。 あわせて、コンセプトベースの取り組みも進捗し、研究成果をオープンサイエンスに関する査読付き学術論文として数点公刊した。 以上より、本研究は、全体として、おおむね順調に進展していると結論づけている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで研究は順調に進捗しているので、当初の計画通り、研究を推進する。具体的には、「観測」のうち、阿武山地震観測所サイエンスミュージアムプロジェクトでは、地震観測活動の重要性を市民にひろく理解してもらうためのプログラム開発を、観覧、観測、解析等の各フェースにおける市民参加フレームワークの構築作業として進める。また、豪雨災害系の取り組みでは、「避難スイッチ」、「セカンドベスト」を鍵概念にした住民主体の避難実現のためのアクションリサーチを引き続き推進する。 あわせて、これまで「観測」、「解読」を中心に研究を進めてきたので、次年度からは、天変地異のオープンサイエンスの第3、第4の柱をなす「共感」と「救済」の側面での研究にも本格的に取り組む。「共感」では、上述の「観測」、「解読」活動を通して、科学と社会(科学者と市民)との信頼関係を再構築するための教育論を確立するための研究を開始する。具体的には、熟議民主主義、サイエンス・カフェなど、近年脚光を浴びてきた参加型のサイエンス・コミュニケーションとオープンサイエンス運動との異同について理論的かつ実践的に検証する。「救済」では、天変地異からの救済・再生へ向けて、災害をめぐって科学が生み出した言語(知識)と日常生活における市民の言葉とをあらためて接続するための研究を実施する。
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Research Products
(10 results)