2019 Fiscal Year Annual Research Report
Research on "introspective altruism" as identity of people of the world, considering its social implementation.
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19H05476
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
中谷 英明 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20140395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入澤 崇 龍谷大学, 文学部, 教授 (10223356)
末木 文美士 国際日本文化研究センター, 研究部, 名誉教授 (90114511)
佐伯 啓思 京都大学, こころの未来研究センター, 特任教授 (10131682)
新宮 一成 奈良大学, その他部局等, 特別研究員 (20144404)
市川 裕 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 名誉教授 (20223084)
伊東 貴之 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (20251499)
村井 俊哉 京都大学, 医学研究科, 教授 (30335286)
小野塚 知二 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (40194609)
嵩 満也 龍谷大学, 国際学部, 教授 (40280028)
久松 英二 龍谷大学, 国際学部, 教授 (90257642)
清水 耕介 龍谷大学, 国際学部, 教授 (70310703)
熊谷 誠慈 京都大学, こころの未来研究センター, 准教授 (80614114)
山本 真也 京都大学, 高等研究院, 准教授 (40585767)
舟橋 健太 龍谷大学, 社会学部, 講師 (90510488)
池内 恵 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (40390702)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | 自省 / 利他 / 利己心 / 涅槃 / 潜在意識 / 認識論 / Atthakavagga / Suttanipata |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「自省」と「利他」という2原理に拠る「自省利他」思想の解明と、その社会への実装方法の探求である。 2019年7月に総勢16名で発足した本科研は、2020年年初からのCovid-19蔓延により現地調査、国際シンポジウム等が不可能となったが、「自省利他」思想の解明と諸方面からの検討に関しては、2021年度までに年2回の全体会議と年約10回の研究打合せをオンラインによって実施し、大きな成果を上げることができた。 「自省利他」思想は、ブッダが残した唯一の詩篇Atthaka-vagga(Suttanipata第4章、以下Av)が記述する哲学である。本科研は核心が不分明であったその哲学を二千数百年ぶりに初めてほぼ明確にした。さらに人文・社会・自然の3領域の知見を集め、その哲学が現代世界に果たし得る役割を検証し、それを社会実装する方法を探ってきた。 Avがブッダの残した唯一の詩篇であるとする推定は中谷が2003年以来提唱してきたが、今回、それを補強する事実として詩篇の名Atthakaの意味の解明のほか、Rigveda以来の韻律発展史および認識論発展史の中にAvを位置づけることができた。またAvにおけるnibbana(涅槃)概念の特殊性(継続的利己心払拭のプロセス)を解明するとともに、認識の5様態説の意味の特定によってAvの立場を初めて明確化し、ブッダ哲学の根幹を明らかにすることに初めて成功した。 自身に常在する潜在利己心の自覚から出発し、その払しょくに努め続けるという、柔軟で謙虚かつ創造的な「利他の心」を保ちつつ「利他の行為」をめざすAvの思想は、神仏等の絶対的存在を認めない純粋な哲学として、現代の人々の優れたアイデンティティとなり得ることが、人文・社会科学のみならず精神医学、脳科学、人類学のこれまで3年間の共同研究を通じて徐々に明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年7月から開始した本科研は、8月には第1回研究会を龍谷大学で開催して順調に共同研究を開始した。しかし2020年年初からのCovid-19の蔓延によって、全体会議・研究打合せのすべてをオンラインに切り替えて共同研究に当たってきた。 オンライン共同研究は16名が参加する本科研では遠隔地の研究者間の情報交換の機会を増やし、参加者の日程調整が容易となるなどプラスに働いた面もあり、理論的研究に関しては、予定を大きく上回る成果を上げることができた。 とりわけ二千数百年ぶりにAtthaka-vaggaの理解を一新し、ブッダの真意を初めて明らかにし得たこと、そしてその意味の検討を人文・社会・自然の諸領域の視点から開始し得たことの意義は大きいと考えられる。 しかしながら、研究分担者がインド、タイなどで行う予定であった実地調査・「自省利他」実装研究は不可能となり、龍谷大学での国際シンポジウム開催も2023年2月まで延期を余儀なくされている。 以上のように、文献学的、理論的研究は予想を超えて進捗したが、不測の事態によって、実地調査・実装研究、国際シンポジウムを遂行できなかったため、研究全体としてはやや遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
情報工学と遺伝子工学に代表される最新の科学技術や、直近のコロナ禍やウクライナ戦争等の不測の事態等がもたらしている世界の大変容は、人々の新しい行動原理とそれに基づく新世界システムの構築の必要性をいよいよ明確にしつつある。 利他は古来、諸宗教、諸思想が説くところであるが、現代まで宗教、文化、国家、民族等の枠を超えた利他はグローバルには実現していない。例えばスミス『道徳感情論』は個人、国家、人類への愛ではなく、神の命令のみを行動原理とすべきと言う。しかしそれでは異教徒との衝突を避け得ない。ソクラテスは善く生きることは吟味を行うことであると言う。これは行く先を定め難く、現にプラトンはイデアを、アリストテレスは中庸を原理として提案せざるを得なかった。孔子は礼の行為が恕の心を育むとしたが、家や国家を超えた普遍的原理を確定し難い面があった。 「自省利他」思想のパラメータは3つある。1)「自己における無自覚の利己心」の常在の自覚とその払拭(ニッバーナと言う)。2)利己心払拭の長期継続による「利他の心」の涵養。3)「利他の心」によって生きること、すなわち世界の客観的認識とよりよい社会を構想し、それを構築することへの貢献。 「自省利他」は、先ず、無自覚の利己心常在の自覚という自己否定から出発するから、一切の制限が存在しない。ただしニッバーナは比較的長期間を要する訓練であるため、ブッダはその実践を出家者に託した。しかし現代社会では、とりわけ情報技術の発達により知識は多少とも普遍的に共有され、すべての人が上記の3パラメータを実践し、包括的視野を有する自律的ジェネラリストとなる可能性が開かれている。 本科研は最終年度である次年度において、「自省利他」が与え得る行動原理をさらに具体的に解明することに努め、それを実装するための制度設計の構想を、人文・社会・自然の3科学の研究分担者が共同して遂行することとする。
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[Book] 現代社会の仏教2020
Author(s)
船山 徹、蓑輪 顕量、熊谷 誠慈、室寺 義仁
Total Pages
256
Publisher
臨川書店
ISBN
4653045755
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