2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K20459
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉村 崇 名古屋大学, 生命農学研究科(WPI), 教授 (40291413)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 概年時計 / メダカ |
Outline of Annual Research Achievements |
繁殖活動や渡りのように動物の様々な営みには季節のリズムがある。植物、昆虫、脊椎動物など、様々な生物には概ね1年の内因性のリズムを刻む「概年時計」が存在し、遺伝することが示唆されている。約1日のリズムを刻む「概日時計」や、約2時間のリズムを刻み体節の形成に関与する「分節時計」の分子機構については理解が進んだものの、「概年時計」の分子機構は謎に包まれたままである。そこで本研究では概年時計の分子基盤を明らかにすることを目的とした。 まず、2015年から2017年にかけて屋外の自然条件下で飼育したメダカから毎月視床下部、下垂体を採材して得た2年間の時系列試料についてRNA-seq解析を行ったところ、約3400個の年周変動遺伝子を同定した。この中には約24時間のリズムを刻む概日時計遺伝子も含まれていたことから、日内変動遺伝子の発現パターンが季節によって変化することで、見かけ上、季節変動している遺伝子も含まれることが示唆された。そこで春分、夏至、秋分、冬至において、それぞれ1日を通じて4時間ごとに視床下部、下垂体を採材して、RNA-seq解析を行うことで、日内変動遺伝子を同定した。その結果をふまえ、日内変動を伴わず、年周変動する「狭義の年周変動遺伝子」を同定した。次に年周リズムを刻む転写翻訳ネットワークを明らかにするために、これらの年周変動遺伝子の上流領域に共通する転写因子結合配列を同定するとともに、そこに結合しうる転写因子を網羅的に同定した。転写因子とターゲット遺伝子は同じ細胞に発現している必要があるため、メダカの視床下部、下垂体を用いてsingle cell RNA-seq (scRNA-seq)解析を行った。内因性の体内時計の重要な性質として環境因子への同調性という性質があるが、この性質を理解するため、短日刺激、長日刺激、温度刺激によって発現変動する遺伝子も同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究を提案した時点から、飛躍的な技術革新があり、当初不確実だったため、研究提案に盛り込んでいなかったsingle cell RNA-seq解析やspatial transcriptome解析を完了することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2年間の時系列試料を用いたRNA-seq解析、single cell RNA-seq解析、spatial transcriptome解析、バイオインフォマティクス解析の結果を統合し、概年時計遺伝子の候補を絞り込む。既に年周変動遺伝子の上流領域に保存されている転写因子結合配列を絞り込んでいるため、プロモーター解析によって、概年時計を駆動する転写翻訳ネットワークを明らかにする。また、予備的な実験により、恒常条件下においても1年に近いリズム現象が観察されているため、見出した概年時計遺伝子の変異体をゲノム編集で作出し、約1年の内因性のリズムに及ぼす影響を検討する。
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[Journal Article] Seasonal changes in NRF2 antioxidant pathway regulates winter depression-like behavior2020
Author(s)
Nakayama T, Okimura K, Shen J, Guh YJ, Tamai TK, Shimada A, Minou S, Okushi Y, Shimmura T, Furukawa Y, Kadofusa N, Sato A, Nishimura T, Tanaka M, Nakayama K, Shiina N, Yamamoto N, Loudon AS, Nishiwaki-Ohkawa T, Shinomiya A, Nabeshima T, Nakane Y, Yoshimura T
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Journal Title
Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA
Volume: 117
Pages: 9594~9603
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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