2021 Fiscal Year Research-status Report
Empirical and Theoretical Research on the Reality of LGBT People and their Right Protection in East and Southeast Asia
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20K20508
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉田 邦彦 北海道大学, 法学研究科, 教授 (00143347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬名波 栄潤 北海道大学, 文学研究院, 教授 (10281768)
鈴木 賢 明治大学, 法学部, 専任教授 (80226505)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | LGBTQ / フェミニズム法学 / 批判法学 / 同性愛 / 批判法学 / 脱構築主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
LBGTの議論は欧米中心的に進められているが、本研究は第1に、理論面でそれを塗り替え、第2に、その各論的・実務的問題に即して差別実態を明らかにし(具体的には、婚姻・家族形成、社会的暴力(歴史的不正義)・家庭内のDV、性別を巡る諸問題(職場差別、社会保障法の差別など))、打開策を追求し、第3に、欧米と東アジア・東南アジアとの比較から、今後の変革のあり方を展望することを目的とするものである。その際に、台湾やカンボジアなどの状況が比較的リベラルであることに鑑みて、その由来を明らかにし、状況が類似する日韓はもとより、東アジア・東南アジアの状況の底上げを図ることを目指している。
2年目である今期は、第1課題は、理論研究としては、LBGTの動きの中心である欧米、とくにアメリカ法学での同性婚姻法の変遷を巡って、豊かな議論とともに、混沌とした理論的基礎付けに向き合い、フェミニズム法学や(批判)人種法学との異同に注視して、状況分析・整理に努めた(継続中)。第2に、その各論的・実務的問題としては、札幌地裁で同性婚を認めないのは違憲とする判決が出て(但し賠償請求は棄却)、更にその後の性的平等化の立法を巡る草の根の活動にも留意した。とくにこの期には、判例研究を行い共同研究者間で意見交換し、それが公表された。第3に、欧米と東アジア・東南アジアとの比較法であるが、とくに台湾やカンボジアなどの状況が比較的リベラルであることに鑑みて、その由来を明らかにし、その状況把握・実践的方策を模索した。しかし、これらの隣国は、コロナ禍で欧米以上に訪問は難しく、難航している(前年度に行ったカンボジア訪問も、海外出張承認が得られず、自己負担を強いられている)。これらの諸国でもコロナ感染がその後広まっており、予断を許さない状況である。その分、欧米(とくにアメリカ合衆国)の研究者との交流を深めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「おおむね予定通り」とは記したが、コロナ感染により、今後の東アジア・東南アジア調査が順調にできるかは、暗雲が垂れ込めており、また欧米のこの分野の研究者との意見交換も緒についたばかりである。
とくに前年度(2020年11月)に行ったカンボジア出張は、本科研の業務遂行との関係で充実したものであったが、当時同国は、犠牲者ゼロ・感染者20名という日本とは比べものにならないほどの『安全地帯』であり、パニャサストラ大学からの招聘の手紙をいただいたにも拘わらず、未だ北大法の『出張命令』が得られていない状況で、その出張に関する本科研の執行ができず、所要費用数十万は自己負担を強いられており、深刻である。それがトラウマになり、東アジア、東南アジアとの研究交流も頓挫したままで、予算の執行もままならず、繰り越し分も累積しており、考えあぐねている。他方で、その分、欧米の関連研究者(とくにアメリカ合衆国のLGBT研究者)との学術交流に努めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目であり、理論研究、実態研究、比較法研究のいずれにおいても、今後ともその深化が求められる。
すなわち第1に、理論研究は、対面的な交流を踏まえての更なる考究が求められるし(この点で、アメリカの大規模なLGBT課題遂行に関するハイブリッド会議には参加したが(2021年12月)、未だ制約はある)、第2に、同性婚の我が国での実現に向けた草の根研究の継続とともに、更に多面的に、差別問題の現実を明らかにする必要がある。近時の札幌地裁判決の評釈を報告・意見交換・公表をしたが、具体的には、婚姻問題や家族形成(養子、人工生殖)のみならず、社会的なLGBTQに対する暴力(歴史的不正義)・家庭内のドメスティックバイオレンス、性別を巡る諸問題(職場差別、社会保障法の差別、トイレ・更衣室などのあり方など、さらには、エイズなどの同性愛に関する医療保障上の差別・費用負担問題など)が山積しており、その詳細を多面的に明らかにする必要があり、なお緒についたばかりと言うべきなのかも知れない。
さらに第3に、東南アジアで構築しつつあるネットワークを踏まえた社会実態調査を深める必要がある。台湾に注視した隣国との交流も未だ充分な展開をできておらず、北大の海外出張に対する姿勢も後ろ向きであり、本研究が力を入れたい、国際的な意見交換ないし実態調査において、《コロナ禍での身動きがとれない状況》は深刻であり(私がカンボジア訪問をした時期よりも、現在は事態は悪化している)、どのようにこれを打開していって良いのか、未だ見通しが立たない状況である。他面で、常時比較参照すべき、欧米、とくにアメリカ法学のこの領域からの学びは、重要であり、東アジア、東南アジアの研究者との交流の代わりとして、鋭意その推進に努めたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染のために、内外(とくに海外出張)が難しく、身動きがとれない状態となり、ないし海外調査を行っても、本科研による執行ができない事態となっているためである。
今年度は、前年度に比べると、欧米への出張が若干認められるようになったので(しかし本研究で主眼としている東アジア、東南アジアの研究者との交流は難しい状況が続いている)。本研究が常時比較参照する、欧米、とくにアメリカ合衆国のLGBT研究者との学術交流に留意しつつ、その方面での研究進展に努めたい。もちろん本研究がターゲットとするアジア圏研究者との交流が、少しでも早く回復できることを願ってやまない。
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