2021 Fiscal Year Research-status Report
Lateral biasに基づく革新的膜タンパク質機能解析場の構築
Project/Area Number |
20K20550
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平野 愛弓 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (80339241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
但木 大介 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (30794226)
馬 騰 東北大学, 材料科学高等研究所, 助教 (10734543)
山本 英明 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (10552036)
小宮 麻希 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (00826274)
火原 彰秀 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (30312995)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | 膜タンパク質機能解析 / 脂質二分子膜 / Lateral bias / 微細加工技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
Lateral bias印加のための電極内蔵型支持体を作製し,この支持体中での膜形成について検討した.ベース素材としてはシリコン(Si)チップとテフロンフィルムの2種を比較した.その結果,いずれの素材においても脂質二分子膜の形成が可能であったが,Siチップでは脂質分子のみで膜形成が可能であるのに対し,テフロンフィルムでは孔周辺にヘキサデカンの塗布が必要であった.次に,これらの膜系にLateral biasを印加したところ,Siチップ系では交流電圧が,テフロンフィルム系では直流電圧が低ノイズ計測に適していることが分かった.さらに,形成した脂質二分子膜中にフラーレン誘導体(PCBM)や生体イオンチャネルを包埋し,Lateral biasの効果について検討した結果,PCBMドープ膜が示す膜貫通方向の光誘起電流や,電位依存性Naチャネルが示す膜貫通電流が,ともにLateral biasによって増大する現象を見出した(Faraday Discussion, in press, 2022).しかし,その作用メカニズムは不明であったため,平面脂質二分子膜に対する蛍光観測系を立ち上げ,Lateral biasの作用メカニズムについて蛍光プローブを用いた検討を進めた.また,上述の電極内蔵型支持体では,Lateral biasの印加に伴って電極材料のチタン(Ti)が酸化チタン(TiO2)へと変化するという課題も判明したが,Ti電極を白金(Pt)で被覆することによって酸化を防止できることも分かった.来年度は,電極内蔵型支持体の量産化も進め,メカニズムの検討および応用探索を加速化していく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主テーマの一つであるLateral biasという新概念について,Lateral biasを導入した膜系の構築と,膜貫通電流に対する増強効果について論文発表を行っている.さらに,Lateral biasのメカニズム解明について,昨年度に構築した脂質二分子膜-蛍光観察系を用いて,蛍光プローブ分子に基づく解析を進めている.これと並行して,イオンチャネルへのLateral biasによる作用についての定量的解析も進めている(論文執筆中).また,派生研究として発生したTiO2ナノ構造体のセンサー応用についても論文として公表しており,当初の予定通り,概ね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続き,構築した脂質二分子膜の光学観測系を用いて,Lateralbiasの作用メカニズムについて検討するとともに,その展開可能性について検討を進めていく.また,膜張力に対する効果についても,引き続き,調査していく予定である.さらに,電極内蔵型チップの量産化プロセスの確立も進めていき,研究を加速化する.
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Causes of Carryover |
電極内蔵型チップを形成するために使用していた電子ビーム蒸着装置が故障したため,数ケ月間,本装置を使用できない時期があり,プロセス関連の消耗品使用量が大幅に削減されたことが,次年度使用額が生じた大きな理由である.また,コロナ禍により,多くの国際・国内学会が中止またはオンライン開催となったため,外国・国内旅費が発生しなかったことや,コロナ禍の物流遅延により多数の高額消耗品が2021年度内に納品できなかったことも繰越額を増大させた要因となっている.電子ビーム蒸着装置については,別予算(基盤A)にて装置の主要部位を2021年度内に交換し,再稼働をスタートさせた.2022年度は本装置がフル稼働することが予想されるため,貴金属ターゲットやテフロン材料等の高額消耗品の増大が想定される.さらに,2022年度は研究室に所属するスタッフも増員される予定であり,こちらも消耗品費の増大を加速するため,2021年度に生じた次年度使用額を活用して,消耗品費の増大に充当する予定である.
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