2021 Fiscal Year Research-status Report
朝鮮通信使行列図の再解釈―「虚構」を含む史資料の歴史的位置―
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20K20717
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
池内 敏 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (90240861)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 朝鮮通信使 / 行列図 / 近世 / 日朝関係史 |
Outline of Annual Research Achievements |
朝鮮通信使行列図にかかわる分析のうち、前年度に口頭発表を行った「延享5年朝鮮信使行列図」(大英博物館および大阪府立中之島図書館)の比較検討については「研究ノート」として公刊した。 朝鮮通信使行列図およびその背景となる江戸時代の朝鮮通信使・日朝関係史に関連のある対馬藩政資料の調査を何度か実施し(長崎県立対馬歴史研究センター、慶応義塾大学図書館)、また「いわゆる『朝鮮通信使来朝図』」として知られるもののうち、栃木県立博物館・福岡市立博物館所蔵のものについては原本調査を行った。さらに、神戸市立博物館所蔵のものは精細画像を入手し、天理図書館所蔵のものは複製の作成をお願いした(現時点で見入手)。 それら調査を踏まえて朝鮮通信使行列図の解釈にかかわる口頭発表を行い、それを踏まえて成稿化している最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ感染症による行動制限があるなか、日本国内の対馬藩政資料を所蔵する機関への調査が可能であったこと、また必要な朝鮮通信使行列図の画像のうちかなりの部分を精細画像で入手できたこと、また原本調査を許していただいた博物館が複数あったこと、こうしたことにより主たる分析対象である朝鮮通信使行列図の分析それ自体は順調に進行できた。また、関連分野への視野を広げつつ研究を展開できたことは、本研究が今後どのような方向を目指すべきか示唆を得ることとなった。ただし、韓国に所在する対馬藩政資料は調査できなかったため、この点が大きな課題である。思うように史料調査に出かけることはできなかったが、その分、落ち着いて文献を読み込むことが可能となり、いくつかの発見が出来たことは予想外の収穫であった。
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Strategy for Future Research Activity |
朝鮮通信使行列図の分析については、入手した精細画像およびこれから入手予定の画像を併せて分析を進める。本研究が当初から目指してきた通説的理解を根本的に見直すことについては、これまでの2年間の調査・分析と口頭発表を通じた議論・意見交換を経て、おおよそ達成可能ではないかとの感触を得た。その感触をもとに、きちんとした研究論文としてまとめ上げたく考える。
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Causes of Carryover |
史料調査が必ずしも思うようにはできなかった。それは、海外に所在する機関への出張が困難だったこと、国内の機関でもたとえば学外者の入館を認めない大学図書館が多かったことによる。次年度ではこうした国内外の機関への調査が可能になれば実施するし、そうでなければ、本研究に関わりの深い資料所蔵機関で調査を受け入れしてくれるところで調査を継続することとしたい。
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