2020 Fiscal Year Research-status Report
診断前支援段階における自閉スペクトラム症児の早期社会接続に関する介入手法の確立
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20K20844
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
大石 幸二 立教大学, 現代心理学部, 教授 (80302363)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 診断閾下 / 社会的随伴性 / 不安 / 対人相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1年次の研究では,研究代表者のこれまでの研究実績をふまえ,自閉スペクトラム症が疑われる幼児(診断閾下を含む)に対する社会的随伴性(逆模倣やミラーリング)の効果評価を研究課題とした。 2020年7月30日までに交付が内定し,諸手続を経て8月30日までに交付予定額が確定した。その後,新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大が進むなかでも,実験系を構成するための協議をオンラインにより進めた。また,その一方において,首都圏における長時間の移動を伴わない範囲でデータ収集を行い,逆模倣による介入の効果に関する実証研究論文(秋元・大石・若井・藤島,2020)を公表した。さらに,社会実装のための事前準備として,多職種連携および地域支援に関する討論を招待論文(大石,2020)に公表した。 第1年次の研究を通じて,逆模倣やミラーリングのような最も簡易で侵襲性の低い手法が,不安や恐怖を誘発することなくポジティブな対人相互作用を促進することの確認であった。 実際に,研究参加者とされた自閉スペクトラム症のある幼児,診断閾下の幼児,さらには,知的発達症を合併する幼児において対人相互作用のスキルが変容し,対人注目や共同注意,遊具・玩具の共有に係る行動の生起頻度に肯定的な変化が生じた。また,標準化された心理尺度を用いた評価により,メンタライジング(他者の心の様子を推論して社会的行動を自発する心理学的メカニズム)の成立につながる下位尺度の得点にも変化が現れた。 これらの研究課題は第2年次まで継続し,事例数を順次増加させて再現性の確認を行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の中,感染防止措置を最優先し,長時間の移動も完全に排除し,大学の実験室内に学外者を研究の目的のために招請することを見合わせた。その結果,①2~3年後の社会実装を達成するためのフィールドに直接出向いて,現場の実態把握を行うことについては遂行できなかった(可能であればそのような取り組みを推進し,挑戦的意義を高めたかった)。また,②事例と直接接触して,対人相互作用を促す行動介入を行うことも不可能であった(可能であれば,第2年次までに跨がる計画を,第1年次のうちに完了させて,研究計画を大きく進展させられると良かった)。 それでも,第1年次の計画として盛り込んだ内容については,限られた期間・条件の中でも十分に達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では身体性や皮膚・前庭感覚がきわめて大きな影響を有する。単なる情報のやりとりによっては,相互に疎通することができない研究課題を今後も扱う計画である。そのため,新型コロナウイルスの感染拡大(COVID-19)が収まり,長時間の移動に一切の制約が消え,全国民にワクチン接種が可能になった時点で,本研究を一層推進する計画である。 なお,研究推進に際して,当初検討していた唾液採取を見合わせなければならなくなった。新型コロナウイルスが口腔に留まり,あるいは舌表面・咽頭を経由して体内に取り込まれ,重症肺炎を引き起こすと共に,ウイルスを含む唾液が飛沫となって感染拡大を引き起こすということがその理由である。 第2年次以降の研究(令和3~4年度)では,ポジティブな対人相互作用の促進を検討する他覚的な指標として,視線計測を用いて対人知覚・認識の変化を捉えるという代替措置を講じることにしている。また,そのセットアップをすでに開始しており,今後実験系の構成も行う予定である。
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Causes of Carryover |
第1年次は,採択決定が新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の第2波,第3波の襲来期に該当していた。その結果,社会実装のための事例研究の蓄積も,事前準備の作業も何れも計画通りに進めるわけにはいかなかった。 また,大学勤務もリモートワークが原則となり,予定していた機器類のセットアップを行う必然性も乏しかった。そのために,旅費・謝金も同様に執行できなかった。これが最終的に未使用額が生じた理由である。 新型コロナウイルスの感染拡大(COVID-19)が収まり,長時間の移動に一切の制約が消え,全国民にワクチン接種が可能になった時点で,本研究を本格的に推進する際には,当初予定していた予算を順次執行していく計画である。その場合には,最新のモデルを購入して研究の効率を高めるとともに,旅費を拡充して研究協力者とともに出張することを計画する。
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