2022 Fiscal Year Research-status Report
診断前支援段階における自閉スペクトラム症児の早期社会接続に関する介入手法の確立
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20K20844
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
大石 幸二 立教大学, 現代心理学部, 教授 (80302363)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 多職種連携 / 診断閾下 / 行動コンサルテーション / 社会関係支援 / 随伴ペアリング |
Outline of Annual Research Achievements |
第3年次(令和4年度)の研究では、第1年次(令和2年度)に実施した「不安と恐怖を誘発しない介入法(逆模倣や随伴ペアリング)」の検討、第2年次(令和3年度)に実施した「社会関係支援と精神健康度の改善」の検討を踏まえて、「社会関係支援によるポジティブな対人相互作用促進による二次的障害の予防」の探求を研究課題としていた。新型コロナウイルス感染症の拡大・蔓延の影響を受けて、鹿児島県でのフィールド調査は、すべて中止となった。鹿児島県こども総合療育センターを中心とする鹿児島県は、わが国で診断前支援の取り組みが最も進んでおり、さらに早期社会接続に係る新たなステージに到達しつつある。しかしながら、この中核機関が医療型施設だということもあり、翌年度に期間延長して、実践研究を行う必要性が生じた。 それでも、発達に心配のある乳幼児への介入法について、社会実装を進めるためのエビデンスを蓄積するために、可能な範囲で代替地における実証研究を行い、学術研究論文を執筆して研究成果を公表した。①生育医療と多職種連携における心理支援の役割、②乳幼児の心理支援に寄与しうる行動コンサルテーションの課題整理、③社会関係支援が精神健康度に及ぼす影響と予後の予測、④社会関係支援の主要な要素である随伴ペアリングの影響過程の分析である。 その一方で、やはりフィールド調査を避けて研究を完了させることはできないため、鹿児島県でのフィールド調査を広範に実施するためのステイクホルダーとの関係構築を続けてきた(オンライン会議システムなどを活用することにより、保健医療、福祉、心理、コーディネート現任者向けの研修会の試行などを試みて、研究代表者との関係維持・強化を行った)。よって、令和2年度~令和4年度に得られた研究知見を活用しながら、(補助事業期間延長を申請する手続きを行った上で)社会実装の研究をさらに推進するための準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第3年次(令和4年度)の研究でも、新型コロナウイルス感染症による影響が続いており、研究協力者(機関=医療型施設)の事情に加え、最近ではワクチン複数回接種者においても感染症陽性確認が相次ぎ、当初の計画(鹿児島県でのフィールド調査)をかならずしも順調に進めることができなかった。そのため、フィールド調査を行うための旅費が未執行となっている。 これらの状況を踏まえ、補助事業期間を延長することにより、未実施のフィールド調査を進め、社会実装のためのデータ収集を本格的に推進する予定としている。このように、所期の研究成果を計画通りに十分に修めることができておらず、「やや遅れている」と評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
医療型や福祉型の協力機関では、新型コロナウイルス感染症のクラスター発生の予防措置を講じつつ、実地調査時期を臨機応変に変更できるよう柔軟性の高い研究計画を再設計するようにする。その場合、必要に応じて鹿児島県内の離島(具体的には、奄美大島など)におけるフィールド調査も検討する。ステイクホルダーとの遠隔面接の中で、奄美大島の診断前支援体制は、県庁所在地の鹿児島市と同等ないしそれ以上の進展を見せていることを新たに認識することができた。よって、これらのフィールドについても考慮することで今後の実地調査を成功に導くようにする。 また、第3年次(令和4年度)研究では、乳幼児の心理支援に寄与しうる行動コンサルテーションの課題整理に着手した。また、社会関係支援の主要な要素である随伴ペアリングの影響過程の分析も実施した。保育・教育・療育に従事する人材が、主体的に診断前支援にあたることが必須であることを、これらの研究の知見は示唆していた。よって、令和4年度に得ることができたこれらの研究知見を、余すことなく今後の研究のなかで活用していく。なお、その際に、RA活用などの研究組織の見直しも積極的に検討しながら研究を推進する。 得られた知見は、速やかに学会発表を行い、学会誌等に公表して、研究成果を社会に還元する。
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Causes of Carryover |
第3年次(令和4年度)の研究でも、新型コロナウイルス感染症による影響が続いており、研究協力者(機関)の事情に加え、最近ではワクチン複数回接種者においても感染症陽性確認が相次ぎ、当初の計画(鹿児島県でのフィールド調査)をかならずしも順調に進めることができなかった。そのため、フィールド調査を行うための旅費は未執行である。 直接経費の助成金の次年度使用予定額は、2,189,312円となっている。これらの予定額は主に、旅費1,765,440円(航空=東京-鹿児島間:片道43,170円×往復×8回×2名=1,381,440円 / 宿泊=鹿児島市内:1泊12,000円×2泊×8回×2名=384,000円)と人件費・謝金423,872円(RA:1,500円×6時間×45日=405,000円)に充当する予定(令和4年度末時点)である。そして、残金18,872円は消耗品に充てる予定(令和4年度末時点)である。
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