2021 Fiscal Year Research-status Report
The NIMBY problem as moral dilemma: Neurophysiological functions for judgements on rights of social decisions
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20K20874
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
野波 寛 関西学院大学, 社会学部, 教授 (50273206)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田代 豊 名桜大学, 国際学部, 教授 (20441959)
坂本 剛 中部大学, 人文学部, 教授 (30387906)
青木 俊明 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (60302072)
大友 章司 関東学院大学, 人間共生学部, 准教授 (80455815)
大場 健太郎 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (90612010)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 忌避施設 / 道徳ジレンマ / 当事者の優位的正当化 / 参加型ゲーミング / 脳活動測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
原発や廃棄物処分場などのいわゆる忌避施設をめぐっては、その立地の是非に関する決定の権限を地元住民などの当事者に対して優位的に与えるべきとする「当事者の優位的正当化」が頻発する。この判断傾向が多くの人々から自明視されたままでは、当事者による拒否の連鎖から当該の施設が立地不可能となり、社会的な共貧事態が生じ得る。つまり、忌避施設をめぐって当事者の権利を優位化する判断は、合理的な判断とは言い難い。 合理的ではないことが明らかであるにもかかわらず、多くの人々が「当事者の優位的正当化」を自明視する原因として、この判断が理性的かつ統制的な過程からではなく、直観的かつ非統制的な道徳判断や共感の過程から生じるものであるとの仮説が成り立つ。本研究はこの仮説を検証するため、①仮想場面法を用いたWeb上での社会調査型実験、②参加型ゲーミングを用いた実験、および③fMRIを用いた脳活動測定実験を実施した。 ①では、「当事者の優位的正当化」を生み出す判断過程が、人々にとって自分自身の個人的利益を最小最大化させる合理的なマキシミン原理ではなく、弱者の救済や公平性回復を重視する道徳基盤によって強く規定されることが示された。②では、地元住民という特定の当事者に対する優位化が、利害の異なる複数の当事者が並立する状況では抑制されることが明らかになった。③では、当事者の優位化する判断に脳内の情動を司る部位が関連する可能性が示唆された。 ①と②の成果については複数の論文で執筆・審査・公刊の手続きを進行中である。③の成果についてはなお詳細な分析を進めており、2022年度中の分析終了と論文執筆を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では当初の目的達成のため、①仮想場面法を用いたWeb上での社会調査型実験、②参加型ゲーミングを用いた実験、および③fMRIを用いた脳活動測定実験、以上3つの検証課題を設定した。このうち①と②については、すでに複数の論文で執筆・審査・公刊の手続きを進行中である。③の成果については現在詳細な分析を進めており、良好な結果が得られる見通しが立ちつつある。 研究開始時に設定した課題3つのうち2つで論文を公刊し、残るひとつに関しても良好な結果の見通しが得られていることから、当初の計画は順調に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究開始時に設定した3つの検証課題のうち、ひとつの課題がいまだデータ分析の途上にあり、これを終了させて論文執筆に入ることが当面の方針である。この課題については現時点までの分析で良好な見通しが立っているため、2022年度中には分析を終了させ、論文執筆に入る計画としている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額となった予算のほとんどは、2021年度に実施予定としていたフィールド調査に伴う出張経費である。 本研究では当初の課題検証の一環として、実際に忌避施設の是非が焦点化した地域でのフィールド調査および社会調査を予定していた。対象地域として鹿児島県奄美大島における公共事業の事例を抽出し、関係者に対する現地でのインタビューなど予備調査を進行させていたが、COVID-19の蔓延により、2021年度には現地での調査がほとんど不可能となった。このため、調査に要する出張費として計上していた予算の大部分が未使用のままとなり、調査を2022年度に延期する形で次年度使用とした経緯である。
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