2020 Fiscal Year Research-status Report
応力発光の新展開_量子ビームを用いたアトミックスケール発光機構の研究
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20K20912
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
鄭 旭光 佐賀大学, 理工学部, 教授 (40236063)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 一宏 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (60444395)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 応力発光 / ミュオンスピン緩和 |
Outline of Annual Research Achievements |
「応力発光」と名付けられた応力発光物質は、低い力学刺激でも発光することから、バイオイメージング、応力分布可視化・破壊予知・亀裂診断など、人工骨から橋梁やタンクなどの巨大建造物の健全性診断まで適用でき、中高期に入った社会インフラ等の保守点検および安全・安心な社会を支える要素技術として強く期待されている。中でも、圧電体を母体材料とした応力発光材料は、さらに様々な電子制御機能が可能になることから、電気―力―光の多元変換が可能というポテンシャルをもつことで、応力発光の新展開が期待されており、諸外国からも強い関心が持たれており、追随の動きが活発である。しかし、今までの研究は応力発光の性能向上と材料開発を中心に行わってきており、これら画期的な応力発光性に潜むメカニズムは、実質上、現象的な考察しか行われていない。メカニズムの解明は、本格的な新学術領域展開のカギとなる。 上記ダイナミックな相互作用を調べられる実験手段が非常に乏しく、これが今までのメカニズム未解明の主因である。この現状を打破する実験手段として、ミュオンスピン緩和に着目した。ミュオンは135.53MHz/Tという巨大磁気回転比を持つため極めて敏感な磁針となると共に、内部磁場の大きさや揺らぎを実時間(時間分解能~0.4-70ナノ秒)で捕らえることにより物質の様々な性質をアトミックスケールで明らかにする微視的な手法である。正ミュオン自身の拡散運動により結晶中の欠陥トラップなども探知できる上、負ミュオンとの比較により正確に評価できる。本研究は核磁気をもつ発光中心の希土類イオン、及び欠陥にトラップされた発光中心由来の電子両方の様子と相互作用の動的過程を検出・究明できると着想し、2020年度はJ-PARCミュオンビームを使って初期実験を行った結果、ミュオンスピン緩和が応力発光性と強い相関があることを発見し、継続実験の指針を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時当初は果たしてミュオンスピン緩和は応力発光の研究に使えるかどうかは挑戦的な試みであったが、実験した結果、ミュオンスピン緩和が応力発光性と強い相関があることを発見し、継続実験の指針を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実験した結果、ミュオンスピン緩和が応力発光性と強い相関があることを発見した。後続研究では応力を印可しながらのミュオンスピン緩和特性の測定し、発光メカニズムの解明に取り掛かる。
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Causes of Carryover |
交付が年度途中に来ており、J-PARC加速器実験予定も加速器側の事情で順延となったため、年度内の予算の一部が次年度使用となった。
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