2021 Fiscal Year Research-status Report
情報科学を基盤としたキラル型希土類錯体の機械学習および探索
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20K21201
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長谷川 靖哉 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80324797)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | キラル / 希土類 / 配位空間 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では情報科学と機械学習を基盤としたキラルEu(III)錯体の配位空間研究を検討した。具体的には、機械学習を行うために必要な基礎データとして、数種類のキラルEu(III)錯体[Eu(+hfc)4]-M+ (M = Na, K, Rb, Cs, NEt4+,NEt3Me+, hfc: へプラフルオロブチリルカンファー)の合成および光物性評価を行った。 [Eu(+hfc)4]- Cs+の三分子に関しては四つの+hfc配位子のフルオロアルキル基が全て対カチオンを取り囲む向きに配置しており、複数のCH-F相互作用およびCs-F間の結合があることが分かった。一方で、[La(+hfc)4]- Na+は三つの+hfc配位子がNaイオンを取り囲む向きに配位しているのに対して、残り一つのhfc配位子はフルオロアルキル基がLa-Naの結合に対して垂直な方向に延びていた。このことより、[La(+hfc)4]- Na+は他の三つの錯体と比較して配位幾何学構造が大きく異なることが分かった。 [Eu(+hfc)4]- Cs+のgCPLは本測定と既報でほぼ等しい値が得られた。 [Eu(+hfc)4]-NEt4+および[Eu(+hfc)4]- NEt3Me+では1.4を超える大きいgCPLが観測され、対カチオンの構造を最適化することでさらなるgCPL増大の可能性が示唆された。一方、MeOH溶液中での[Eu(+hfc)4]- NEt4+のgCPLは-0.08であった。Square antiprism構造を取らない[Eu(+hfc)4]- Na+もgCPLが+0.15と低いことから、Eu(+hfc)4錯体ではSquare antiprism構造によって+hfc配位子のフルオロアルキル基がEu(III)イオンに対し一方向に局在する配位環境がCPL強度を増大させると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
機械学習を行うための基礎データとして、数種類の系統だったキラル型希土類錯体の合成およびX線構造解析に成功した。得られたデータは錯体のカチオン部位の大きさに対応して系統的に配位構造が変化していることがわかり、その配位構造変化が円偏光発光機能に強く影響を与えていることが明らかになった。 さらに、固体状態において高い異方性因子を有する円偏光発光機能の構造が明らかになりつつあり、公式に学術論文に報告されている円偏光発光の異方性因子の世界最高値に匹敵するデータも今年度の研究で得られた。 また、フランスのストラスブール大学で機械学習を専門とするバーネック教授ともオンライン会議を行い、機械学習を行う上での基礎データ条件設定についての援助をいただき、国際共同研究をスタートさせた。 以上、キラル希土類錯体の円偏光機能に関する基礎データ取得および機械学習に関する国際共同研究をスタートしたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究から得られたキラル型の希土類錯体の結晶構造データと光物性値およびCPL強度を基に、機械学習を行う際の初期データとする。さらに多くのキラル型の希土類錯体を合成し、基礎となるデータを揃え、理想的な配位幾何学構造の探索に向けた機械学習をストラスブール大学のバーネック教授との共同研究にて進める。 また、円偏光機能と希土類錯体のLMCT(Ligand-to-metal charge transfer)バンドの関係を明らかにするため、DFT軌道計算にによるエネルギー準位の計算および遷移双極子モーメントの見積もりを行う。この計算には、Euの基底関数を初めて導入し、キラル配位子からEuへの正確なLMCT遷移に関する評価を行う。 得られたX線構造解析データと円偏光発光のスペクトルと異方性因子、およびLMCT遷移における遷移特性を元に機械学習を検討し、化学データベースを使って、円偏光発光の異方性因子を上げるための構造について考察を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍であったため、2021年度は国内および海外での研究発表および共同研究を行うことができなかった。本年度は国内学会および海外での研究発表および共同研究推進を計画しているため、次年度に旅費としての繰越を行った。
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Research Products
(7 results)