2021 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロ金属多核錯体のレドックスエントロピー制御と革新的熱電変換システムの創出
Project/Area Number |
20K21202
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
二瓶 雅之 筑波大学, 数理物質系, 教授 (00359572)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 金属多核錯体 / 熱電変換 / レドックスエントロピー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高効率熱電変換システムの開発に資する分子性熱電変換材料の開発を目的としている。具体的には、再生可能エネルギーの有効利用の観点から重要な湿式の熱電変換システムである熱電池に着目し、金属多核錯体を用いた革新的な熱電変換システムを創出する。ここで、異なる金属イオンからなる金属多核錯体に着目し、酸化還元に伴うエントロピー変化(レドックスエントロピー)の制御に基づく熱電変換特性の探索を行う。研究代表者はこれまで、ヘテロ金属混合原子価多核錯体の酸化還元と分子内電子移動に伴う電子状態変化について研究を行ってきた。その結果、ヘテロ金属混合原子価多核錯体が非常に大きなレドックスエントロピー(=”スピンエントロピー”+”溶媒和エントロピー”+”会合体形成エントロピー”)を示す可能性があることを見出した。そこで昨年度は、ヘテロメタル多核錯体の酸化還元挙動を明らかにし、エントロピー駆動熱誘起分子内電子移動に伴う状態変換が酸 化還元挙動に与える影響について検討し、鉄およびコバルトイオンからなる環状四核錯体が可逆な2段階の酸化および2段階の還元反応を示すことを確認した。さらに、この酸化還元挙動の温度依存性について検討した結果、エントロピー駆動分子内電子移動による状態変換に起因して、酸化還元電位の温度変化が顕著に変化することを見出した。本年度は、ヘテロ金属混合原子価多核錯体のレドックスエントロピーをさらに増大させることを目的とし、両親媒性アニオンを対アニオンにもつ錯体を合成した。その結果、本錯体がアルキル期の構造的自由度に由来する特異な相転移挙動を示すことを見出した。このような挙動は、酸化還元挙動における構造的自由度の変化にも大きく寄与することが期待される興味深い知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、金属多核錯体を基盤とした革新的熱電変換システムの創出を目的としている。本年度は、非常に大きな構造的自由度を持つ金属多核錯体の合成に成功した。本成果は、非常に大きなレドックスエントロピーを示す物質系の合成指針を与えるものと考えられ、順調に研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度に合成した両親媒性アニオンを持つヘテロメタル多核錯体のレドックスエントロピーの見積もりを行う。さらに、架橋性水素結合ドナー分子を共存させることで、これまでのレドックスエントロピーの要素である”スピンエントロピー”および”溶媒和エントロピー”に加えて”会合体形成エントロピー”を組み込むことで、巨大レドックスエントロピーの実現を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度においては、前年度に引き続きコロナ禍の影響のため当初計画していた測定に関わる共同研究の遂行を次年度に行うこととした。そのため、合成研究を中心とした研究を進めたために次年度使用額が生じた。来年度は、本年度分の予算と併せて共同研究を推進する。
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Research Products
(14 results)