2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K21208
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
陰山 洋 京都大学, 工学研究科, 教授 (40302640)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥屋尾 隆 北海道大学, 触媒科学研究所, 助教 (80775388)
|
Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
|
Keywords | 層状化合物 / 秩序無秩序 / 分子 / アンチモン化合物 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
NaCl、CsClなどの無機固体は、多岐にわたるが、共通して陽、陰イオンが隣り合った規則配列をとる。しかし、研究代表者は、ニクタイド化合物の探索の結果、A2BSb3では、陽イオンと陰イオン(Sb)がランダム分布することを発見した。また、ランダム構造のほか、通常の秩序構造をとることも見出した。本研究では、予備知見のもと大きく分けて陽・陰イオン無秩序の起源解明、無秩序・秩序の操作と新物質設計の基盤構築、陽・陰イオン無秩序構造に由来した機能創発の目的で鳥屋尾と遂行した。 本課題研究全般を陰山が統括した。物質合成、組成・構造解析、計算、物理機能開拓は主に陰山研にて、触媒評価は鳥屋尾が行った。(1)陽・陰イオン無秩序の起源解明に関して、一連のA2MSb3(A = Zr, Hf; M = 3d遷移金属)を新たな合成を試みた。二体分布関数(PDF)、XANES、NMRなどから、Sb-Sbの化学結合とそれに伴う歪みの効果の解明を試みた。また、第一原理計算を行い、バンド構造、局所結合の強さの違いを調べた。良質な単結晶の合成も試みた。(2)無秩序・秩序の操作と新物質設計の基盤構築に関して、合成条件により同一組成で秩序相、無秩序相を作り分ける。また、元素置換、外的変数(圧力など)の関数を作成し、秩序・無秩序転移を制御する。A3MSb4などの高次構造を合成し、次元性との相関を明らかにすることを試みた。(3)陽・陰イオン無秩序構造に由来した革新的機能創発に関して、触媒については、脱在来型石油資源に資する反応を行う。in-situ/operando分光や計算科学を駆使して活性種を特定し、構造との相関関係や反応機構を明確にする。電子物性については、秩序相・無秩序相の状態図をもとに、構造相転移の近傍領域に着目し、電気抵抗、比熱などの各種物理測定から高温超伝導などの新規物性開拓を試みた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)陽イオン・陰イオン無秩序の起源解明:精密構造解析によってA2BSb3のSbが若干過剰であることが明らかになった。これは、秩序型構造をとる場合にでも、無秩序の場合と同様に、Sb-Sb結合が形成(Sb同士の最近接距離は 2.7-2.8 A 程度)して安定化されることを示唆する。つまり結晶内の分子形成による安定効果が、エントロピー効果とともに、クーロン相互作用に打ち勝つと考えられる。この仮説を検証するため一連のA2MSb3を合成し、Sb二量体などの形成の観測を試みた。その結果、組成は近いが、全く違う構造を得ることに成功した。 (2)無秩序・秩序の操作と新物質設計の基盤構築:本研究で開発される一連のA2MSb3化合物対し、合成条件、元素置換等を変数とし秩序、無秩序相の制御を試みる。また、A2MSb3の高次構造や非アンチモン系でも類似の現象を探索し、より一般の物質設計の方針を明らかにする。これまでに物質探索の過程でセレンディピティ的に大きな格子をもつクラスター系のアンチモン化合物を発見した。 (3)陽イオン・陰イオン無秩序構造に由来した革新的機能創発:A2MSb3において陽イオンと陰イオンが秩序する場合、MSb4平面四配位のみから構成されるが、無秩序の場合には、Mは様々なSb種(Sb単イオン、Sb二量体、Sb三量体など)とMで配位される。この特異な局所構造や電子構造に由来して、通常の物質(配位)では現れない新規物性が創発する可能性が高い。触媒に関しては、既に予備検討により逆水性ガスシフト反応(CO2 + H2 → CO + H2O)活性を見出した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度も(1)「陽イオン・陰イオン無秩序の起源解明」、(2)「無秩序・秩序の操作と新物質設計の基盤構築」、(3)「陽イオン・陰イオン無秩序構造に由来した革新的機能創発」の方針に基づいて研究を行う。特に、今年度はスクリーニングして、秩序相との比較をしながら、特異な局所構造と触媒機能との相関を明らかにする。電磁気物性に関してはコロナの影響に関しては、昨年は取り組めなかったので、今年度は重点化して無秩序相との相転移点の近傍にて発達する強い揺らぎを利用した新奇現象や新規電子相を開拓する。昨年度は、物質探索の過程でセレンディピティ的に大きな格子をもつクラスター系のアンチモン化合物を発見した。このクラスターはレドックスアクティブな遷移金属をもたないにも関わらず高い触媒活性を示すという興味深い知見がこれまでに得られている。本年度はこの構造解析と第一原理計算などを行い、触媒機能の起源を解明するとともに、元素置換などの可能性を探求していく。
|