2022 Fiscal Year Annual Research Report
抗炎症作用を持つ食品成分が形成する自然免疫記憶についての解析
Project/Area Number |
20K21263
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
戸田 雅子 東北大学, 農学研究科, 教授 (10828429)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 自然免疫記憶 / 樹状細胞 / IL-10 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、食品成分を用いて「抗炎症作用を増強する自然免疫記憶」を樹状細胞に形成すること、さらにその形成メカニズムの解明を目的としている。これまでの研究から、樹状細胞を米ぬか成分やβ(1→4)マンノビオース(TLR4リガンド)をαマンナン(DC-SIGNリガンド)と共に複数刺激した場合、抗炎症性サイトカインIL-10産生を増強する自然免疫記憶を誘導できることを見いだしている。今年度は、自然免疫記憶誘導におけるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の関与を中心に解析した。各種のHDAC阻害剤を用いた解析したところ、HDAC 3やHDAC 6が抗炎症性サイトカインIL-10産生を増強するが、HDAC 11は関与しないことが明らかになった。またHDAC 3は炎症性サイトカインIL-6産生の増強にも関与するが、HDAC 6はIL-10産生増強のみに働くことを見いだした。HDAC6は転写因子STAT3の活性化に関与することが知られている。樹状細胞をSTAT3阻害剤により処理したところ、IL-10産生とともに細胞表面上における共刺激分子の発現抑制が観察された。そこで、自然免疫記憶を誘導した樹状細胞における細胞表面発現分子の発現をFACS解析した。その結果、TLR4リガンドやDC-SIGNリガンドで複数回刺激した樹状細胞では、TLR4やDC-SIGNの顕著な発現増強が検出された。以上より、樹状細胞における抗炎症性の自然記憶形成には、HDAC6やSTAT3を介したIL-10産生に関与する遺伝子発現経路のエピゲネティクス、そしてリガンドに応答する受容体発現増強が関与することが明らかになった。本研究で得られた知見は、食品の免疫調節性機能を増進に貢献すると期待される。
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