2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of genomic abnormalities in normal esophageal epithelium associated with radiation therapy and chemotherapy
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20K21574
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
横山 顕礼 京都大学, 医学研究科, 助教 (20515514)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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Keywords | 放射線療法 / 化学療法 / 2次性発がん / 食道扁平上皮がん / ゲノム異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、放射線療法(RT)、または、化学療法に伴う正常食道上皮に生じるゲノム異常を解明するために、治療介入後に、食道上皮が再生して治癒してゆく初期の粘膜修復の過程で、どのようなゲノム異常が蓄積するのかを解明することを目的とする。がんサバイバーにとって、がんが治癒しても、化学療法やRTが主な原因とされる2次性がんは、生命の脅威であるが、そのゲノム異常の機序は解明されていない。本研究では、経時的に、内視鏡下にRT範囲内・外の正常食道上皮から内視生検を行い、「微小サンプリング」と「単一細胞培養」を実施することで、bulkのみならず、単一細胞あたりのゲノム異常を検出することが可能であると考えた。本年は、1例のRT照射から10年以上経過後にRT照射内に発がんを来した典型例からRT照射内のがん部、照射内の正常部、そして、照射外の正常部からマルチサンプル採取を行い、全エクソン解析を行った。その結果、がん部には、通常のがんと同様に、TP53変異を含む共通変異を認め、RT照射外の正常部には、既報と同様にNOTCH1変異を主体としたドライバー変異を認めたが、RT照射内の正常部は、ドライバー変異を全く認めないにもかかわらず、すべての部位で共通する変異を認めた。さらに、1個の生検から1mm間隔で格子状にマルチサンプルを採取し、全エクソン解析を行った。その結果、全てのサンプルで、ドライバー変異を伴わない共通変異を認めた。以上から、RT後の食道粘膜では、食道におけるドライバー変異が排除されるにもかかわらず、大きなサイズのクローンに置換される可能性が示唆された。このため、治療後1年以内の症例で、経時的なサンプルでの検証を行うこととした。治療前検体のある2例と治療前検体のない2例で検証するも、ドライバー変異が消失する変化は、半数の2/4で再現性があったのみであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は、1例のRT照射から10年以上経過後にRT照射内に発がんを来した典型例からRT照射内のがん部から3か所、そして、照射内の正常部から7か所、そして、照射外の正常部から3か所のサンプル採取を行い、全エクソン解析を行った。その結果、がん部には、通常のがんと同様に、TP53変異を含む共通変異を認め、特に、RTを伴わないがん化と違いを認めず、RT照射外の正常部も、以前、我々が報告しているようにNOTCH1変異を主体としたドライバー変異を認めた。その一方で、RT照射内の正常部は、ドライバー変異を全く認めないにもかかわらず、7か所すべてで共通する変異を認めた。このことを裏付けるため、1個の生検から1mm間隔で格子状に18個の微小サンプルを採取し、全エクソン解析を行った。その結果、全てのサンプルで、ドライバー変異を伴わない共通変異を認めた。以上から、RT後の食道粘膜では、食道におけるドライバー変異が排除されるにもかかわらず、大きなサイズのクローンに置換される可能性が示唆された。このため、治療後1年以内の症例で、経時的なサンプルでの検証を行うこととした。治療前検体のある2例と治療前検体のない2例で検証するも、ドライバー変異が消失する変化は、半数の2/4で再現性があったのみであった。このため、短期では、クローン選択に十分な期間ではないと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
RT照射から1年以内の比較的短期間での経過観察では、1例目の再現データが取れなかった。このため、治療前の検体の有無にかかわらず、RT照射後5年、または、10年と時間が経過した例で、マルチサンプリングすることで、データの再現を取る予定である。また、化学放射線療法後5年以上経過してRT照射内発がんに対して、内視鏡治療症例をリクルートすることで、切除標本の正常部において、マルチサンプリングすることで、ドライバー変異を有さない大きなクローンが存在するか検証する。また、本研究では、単一細胞培養を行う予定であるが、生検1個からの初代培養に難渋しており、こちらも細胞分離過程の条件検討を行い、1個から安定した細胞培養が可能になるようにプロトコール改定を行う予定である。
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Causes of Carryover |
1517円であり、試薬購入の補助に充てる予定である。
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